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母父トニービン

明るいところで読んでね

『パリは燃えているか』が流れても笑ってはいけない

 

笑いは緊張と緩和というけれど、緊張と緊張でも笑えるんですね。

 
「あたしゃ最近アイスが辛い、ヒヤリと奥歯に沁みるのよ」ってなわけで予約を取って軽く25年以上はかかりつけの歯医者へ行くことに。
行きの電車で喉が乾いたから何か飲もうと思ってカフェオレはちょっとまずいかなーとか飲むヨーグルトはアリだろうかとかいろいろ考えた。
そんなことを悩みながら改札を抜けて自動販売機の前に立ち、迷いに迷って結局守りに入った俺という弱気な子羊は震える蹄で緑茶の小さいペットボトルのボタンを押す。
そこでガシャンと落ちてきたのはなんと缶コーヒーですよ。
もうわけがわからず頭クラクラしてきてこんなことなら歯医者なんか予約するんじゃなかったよ貴乃花のように痛みに耐えながらアイスを食べ続けるという自分なりの土俵で戦い続ければよかったその度に心痛めるような時代じゃない誰だってそう僕だってそうなんだっつって悲しみにくれながら缶コーヒーを取り出したらこれが微糖なのよ。
最近はあまり缶コーヒーも飲まなくなったけど、元々ブラックは飲めなくて甘い缶コーヒーなら飲める俺に向けてよりによって微糖を授けるのかよどうすんだこれマジで何の仕打ちなのもう歯1本のためにどれだけ俺を困惑させるのお前ら、と困り果てたからもうそれは自動販売機の上に置いて歯1本というものの価値を歯だけに噛み締めながら先に進むと今度はいつものラーメン屋ですよ。
ここのラーメン屋は美味そうだしたまに人が並んでいていつも気になっているんだけど、この店の前を通るその「いつも」ってのは歯医者に行く直前か直後なわけで歯医者直前はどう考えても無理だから食べる可能性があるとすれば帰りなんだけど帰りはもうそんなの食べたくなる口の中の状態なわけないのでもう一生食べることはないであろうそのラーメン屋を通り過ぎて少し歩いたらようやく歯医者。
長かった。
そんで入って受付したらすぐ治療室に通されてここが痛いんですって言うや否やじゃあこれこれこうしますってことになって歯医者って段取り良いよねー見習うべきだよねーと感心しながら口を開けて従順にまな板の上の鯉されてたら、その時BGMで流れていたピアノ名曲メドレーなのかなんか知らないけどちょうど曲が変わるところで、なんか聞き覚えのある伴奏だと思ったら名曲『パリは燃えているか』なんだよこれが。
おいおいこの状況でこの曲はあまりにも緊張感高まって怖すぎるだろ洒落になんねえよ今はやめてくれ今だけはって突っ込めば突っ込むほどこの状況に対して笑いが堪え切れなくなって今まさに医師に器具を突っ込まれながら最大限に開けている口端を歪めた。
あんな口の形をすることはもうきっとないだろう。
緊張と緊張でも笑えるんですね。ちなみにこんな感じの曲です。