母父トニービン

明るいところで読んでね

今日も一日

 

大きい建物がいつもより離れた位置にあるように見える。

空気か、空間か、何か見えないものが膨張しているのだろうか。

巨大なエイのような雲が空を行く。何も無い空間と、白く暑い雲との境目が妙にはっきりとしている。

このところは大気が不安定らしい。人類にとって、安定こそが全てなのだ。

 

 

遠く遠く、琥珀色をした指向性の強い光。

お前もこっちを見ろと言わんばかりに、幼子の頬にちょっかいを出している。

しかし邪魔者の存在に気付くこともなく、子は必死に自分の足元を見ている。

何か自分で決めたルールに沿って、一歩、一歩と地を踏む。

次の一歩を進めるため浮かせた片足。直前まで踏んでいた場所など、彼の人生にはもう存在しない。

 

身体ごと振り返った格好のまま、ほんの数歩先でじっと待つ母の姿。

長い髪を押さえ、息子が歩く様をただ見つめている。

白かったスカートは既に夕日に染まり、湿った風が裾を弄んでいた。

 

 

今日も一日お疲れ様でした。