母父トニービン

明るいところで読んでね

弟からLINEが来た

 

昨夜ツイッターで「ハイスタ」がトレンド入りしてるのを見かけて、なんだろうとクリックしてみたら、Hi-STANDARDが16年振りにCDを出したという。
ハイスタ・・リリー・・・ス・・・??リリース????は?はあああああああああ?なにこれ?店舗のみ・・・・・?えっどういう・・・・?なにこれ?はあ?え?はあ?なに?なに?出たの?なん・・・ええー?
自分でも目を丸くしているのがわかった。とにかく買わなきゃ!買いに行かなきゃ!
 
慌てて米を研ぐ。買いに行っている間に炊飯を進めておく作戦だ。炊飯器のスイッチを押して、濡れた手で靴下を履いて、財布だけ持って自転車に跨る。
冷静に作戦を立てた割には家の鍵をかけ忘れた。パソコンもつけっ放しだ。
 
暗い中けっこうなスピードを出したと思う。頭の中では『Standing still』が流れていた。You had gone!
なんだよこれ。こんなにはあはあと肩で息しながら、それでも一生懸命に漕ぎまくるのなんていつ以来なんだよ。充実?ちょっと楽しさすらあった。しかしもう大人になっている俺はきちんと赤信号を守っていた。
 
CD屋に入るとレジ前の一番目につくところに置いてある。ほんの数日前に宇多田ヒカルが置いてあったところだ。
ほんとに売ってるよハイスタが。都内じゃ売り切れの店もあったらしいのに、ここはずいぶん在庫あるなおい。
手に取って、表、裏と少し眺める。あ、4曲入りなのか。アルバムだと勝手に思ってたわ。レジで買ってすぐ出る。
CD屋のあたりまで普段は自転車で15分くらいの距離だけど、買いに行ってから帰ってくるまで15分かからなかったかもしれない。
 
製作者が意図してCD屋にしか置かないようにしたCDを買ったので、当然そこを汲んで最初はコンポで再生する。あたりめーだろ。CDは回して聴くんだよ。
電源が入っているだけで気が散るのでつけっ放しだったパソコンをシャットダウンし、歌詞カードを開いて、歌に合わせて目で追う。
小さくて見づらい文字を追いながら、この人達が教えてくれたことが俺の中に強く生きていると痛感する。
そういう部分は普段の文章に、それもかなり前面に出ているだろうな。自分のルーツの一部を知ると同時に、少し気恥ずかしさもあった。
4曲入りのCDは予想通り15分どころか12分にも満たなかった。まだ炊飯器は赤いランプのままだった。
 
 
十数年振りにいきなりCD出るのもすごい出来事なんだけど、何がすごいかって、弟からLINEが来たんだよ。
携帯メールの時代も含めて、連絡しても年に一度、それも正月や墓参りのことくらい。特に関係に悪いところもない、むしろ逆だと思っているが、男の二人兄弟なんてそんなもんよ。
それがいきなり「ハイスタが新曲出したの??」ですよ。
「いまさっき買ってきたよー」「いいなぁー今日買えなかったんだよー」から始まって、少し昔の話になったりして。「ハイスタとかスーパーカーとか、全部兄ちゃんの部屋で出会ったんだよ」とか言い出す始末。
そこまで長い時間じゃなかったけれど、まさかハイスタがきっかけになって、弟とLINEの遣り取りで昔話をするとは。
 
 
LINEってメールとリズム感が少し違っていて、新鮮で面白かった。俺は普段ほっとんど触らないからわからなかった。
何か言うととりあえずすぐ相槌だけ打ってきて、そこからまた会話を切り出してきたりとか、弟はまあ俺よりはだいぶLINE慣れしてる感じがして内心ちょっとだけむかついた。
なんだお前、いよいよそういうテクノロジー適応度合いで逆転し始めたかおいこの野郎。爪折ったビデオテープを上書き録画する方法とか知らなかったくせにお前。
 
LINEの遣り取りは、最後すげー変なところで会話がぶつ切りになって終わった。
もし仲が悪ければ頃合いを見計らって「それじゃまた、正月にでも」なんて終わり方になるのかもしれないけど、そうはならなかった。