母父トニービン

明るいところで読んでね

テイエムオペラオーの話します

 

5月17日、テイエムオペラオーが亡くなった。

 

強かったよなー。「強い」っつってもいろんな強さがあると思うんだけど、この馬の場合は飛び抜けたひとつの強さで戦うタイプではなかった。

重馬場を苦にしないというかむしろ得意、レースで引っ掛からない、揉まれ強い、地味にスタートも上手い、よくわかんないけど精神的にも強い(と関係者・解説者がよく言っていた)と、「勝つ」要素よりも「負けない」要素の多い競走馬だったのです。

だから、他の馬に先着されたとしても、基本的にそれなりの格好はつけるんだよね。そういう総合力の高さに加えて、体力的なタフさを持ち合わせていたあたりが、キタサンブラックに抜かれるまで賞金王を堅持し続けた要因なんでしょう。

 

と言っても実際のところ俺も最強馬論争でこの馬の名前を挙げることはあんまりないし、一芸に秀でた個性的な馬のほうが見てて面白いのもよくわかる。

この馬が勝ちまくっていた頃は、派手な勝ち方をしないから見ててつまらないとか言われてたもんね。

まあでもよくよく考えてみれば確かに、現役当時に熱中してた割には、この馬が勝ったレース動画を見返すことは多くなかったような気もする。たまに見ても皐月賞有馬記念くらいだもんなー。

 

 

3歳

 

この馬が走り始めた頃は、俺も競馬を見始めてまだ何年も経っていなくて、G1レースでさえ全部は見てなかった。日曜の3時半って本当に半端な時間だしねー。

そんなわけでテイエムオペラオーを知ったのは皐月賞、それも競馬中継じゃなくて夜のスポーツニュースだった。

 

そりゃもう馬名のインパクトがとにかく大きかったのなんのって。うわーどえらい名前の馬がG1勝ちよった!と度肝を抜かれた。

あのインパクトに並ぶのは、今のところイナズマアマリリスとシゲルアカワインくらいか。いやいや、キングカメハメハなんて足元にも及ばないよ。

 

しかし馬名ってのは不思議なもんで、もし名前が「テイエムオペラ」だったら俺もあれほど入れ込んで応援しただろうか、と今にして思う。検証しようがないけれどね。

ちなみに欧州あたりからすると「T.M.Opera.O」はなんとなくいい感じの洒落た響きらしい。ほんとかよ。文化の違いって面白いね。

あと解説の吉田均さんはいつも「ティーエム」って発音してた気がする。

 

 

そんな感じで急に年末に飛んで、グラスワンダーvsスペシャルウィーク有馬記念。なつかしー。

今レースを見返してみると、オペラオーも全く差がないと言える強い競馬をしてるんだね。でも当時の俺にはグラスワンダーしか見えていなかった。グラスが勝っていたと知って安心してから、あぁ、あの3歳のやつが3着か、なかなかやるね、くらいだった。

グラスワンダーは翌年も現役を続けることになっていたし、ナリタトップロードとどっこいな印象もあったテイエムオペラオー「1強」の時代が来るなんて、この頃は想像もしてなかったよ。

 

 

4歳

 

あのー、クリームパンのクリーム食べないくらいの勢いですっごい話を飛ばすけど怒らないでね。

 

有馬記念です。

 

道中で他馬から完全にマークされて・・・とかそういうのは当時の俺はよくわかんなかった。

スタートは良かったけれどじわじわ後方に下がっていって、なんか・・・あれ?これやばくない?やばいよね?おいおい、おいおい!そうかー・・・さすがに年間全勝までは難しうわー来た!来た!来た!すげー!勝ったー!

 

やっぱりあの実況だよね。

テイエムは来ないのか!テイエムは来ないのか!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエムかー!テイエムかー!わずかにテイエムかー!」

これがレース実況として正解なのかは知らんけど、やっぱりこういう実況が一番興奮する。アナウンサーの人はオペラオーからけっこう買ってたのかもな。

 

いやーしかし終わってみれば本当に強いなー。東京ドーム10個分くらい強い。

「事実は小説よりも奇なり」って言うけど、これもう現実が競馬ゲーム超えてるよね。リセットなしでこんなの有り得る?

 

 

5歳の春

 

大阪杯でいきなり4着に負ける。これはびっくりした。ちょっと意味がわからないですね。やばやばのやばですね。

 

ナリタトップロード阪神大賞典をすんげーぶっちぎって勝ってるし、メイショウドトウもきっちり日経賞を勝ったのに、オペラオーはこれで大丈夫なのか。

 

 

春の天皇賞

 

後退してゆくセイウンスカイを横目に、積極的な競馬で早めに先頭に立ったナリタトップロードを差し切って勝利。

当時は最後にしっかりと前を交わすような競馬に見えて、さすが!とか思ってたけれど、今レースを見返してみると4コーナーでムチが入ったりしてて、やっぱり反応が悪くなってきてるんだなぁ。

最後にちょこんと差してきたメイショウドトウがG1では5戦連続の2着、ナリタトップロードは前年と同じ3着。こりゃたしかに馬券買ってるほうからしたら面白くないかもしれないわ。

 

ともかく、これでいよいよG1は7勝目。ついにシンボリルドルフという歴史に並んだわけですわ。七冠馬に肩を並べたかどうかは当時から賛否あったけれど、少なくとも数字の上では並んだ。

そして年内に残ったG1は4つ。このまま無事なら新記録余裕ですかねガッハッハ。当時は割と普通のテンションで「10勝まである」と思ってたんだよね。なんかこの馬見てるとゲーム脳になってくるんだよ。

 

 

宝塚記念

 

先行していたメイショウドトウが楽々と前に並びかけるのと対照的に、オペラオーは終始周りを他馬に囲まれた状態。またかよー。やめてよー。

あのシンボリルドルフの主戦だった岡部がずっーと外を塞いでるんだよ。何してくれてんねん。さらに4コーナーでは立ち上がるほどの不利を受けて、直線でなんとか外には持ち出したけれどさすがに今回は届かなかった。

とは言っても、メイショウドトウ目掛けての末脚は強烈なものに見えて印象的だった。これまで散々負かしといて、自分が負けそうになったらいきなり親の仇のみたいに追っかけてくるんだからメイショウドトウからしたらたまんないよね。

 

決して長距離向きとも思えないメイショウドトウ、適性を考えると勝負を賭けるならここか、とも言われていた。

さすがに今回は「オペラオー負けて残念」よりも、「ドトウ念願の初G1おめでとう」の雰囲気が大きかった。関西の大物馬主・メイショウさんも初G1だったしね。

 

 

5歳の秋

 

京都大賞典

 

外から先に上がっていったナリタトップロードは楽な手応えなのに、追いかけるオペラオーは和田がグイグイ押しても反応が鈍い。さらに内からステイゴールドが伸びてくる。

やっとエンジン掛かってきたかと思ったところで、ステイゴールドが外に斜行して、進路を失ったトップロードの渡辺がなんと落馬!びっくりして声が出た。

ステイゴールドはやっとオペラオーの前でゴールしたのに、失格になった。繰り上げでオペラオーが1着。記録上は勝ちがついたけれど、内容では完全に負けてるよなこれ。春のように、叩いて変わってくれればいいんだけど・・・。

 

それと、このレースで逃げ粘って3位入線から繰り上げ2着になったスエヒロコマンダーも、つい最近亡くなっているんだよね。そーいやイナズマアマリリスってスエヒロコマンダーの産駒だったな。

 

 

秋の天皇賞

 

前走があまりにふがいないレースだったので、今回は・・・どうなの?さすがにそろそろピークを越えてきた感じ?という見方も多かった。

まあ仮にそうだとしても、他の出走馬に逆転できるやつはいるのかしら、って感じだったんだよね。メイショウドトウだって年齢は同じなんだし。

それが当日の雨で重馬場になって、あーこれじゃあオペラオーが断然有利だわって感じで、わかりやすく単勝オッズが下がっていったんだよね。

 

G1ではさすがに脇役だけれど、俺が好きだった大逃げのサイレントハンターはここが引退レースってことで、最後に思いっ切り逃げる姿を見届けるはずだった。それが、まさかまさかの大出遅れですよ。

逃げるはずの馬が逃げられなかったせいで、「これ、どうすんの・・・?」って感じでめちゃくちゃなスローペースになった。押し出されたメイショウドトウが逃げる形になっちゃって、ちょっとかわいそうなくらいだった。

最後はさすがオペラオーといった感じで抜け出しかかるんだけど、大外からなんか来てる。アグネスデジタルだー。やめてー。内外すげー離れててわかりづらいけれど・・・これは差されて・・・るよなぁ。はぁ。また2着か。

 

 

ジャパンカップ

 

トゥザヴィクトリーの謎の大まくりを尻目に、直線半ばでドカーンと抜け出して、うわーこれは完璧だ、ついにやったよ・・・。とうっとりしていたところに、外からジャングルポケットが伸びてくる。かなり粘って抵抗はしたものの、最後の最後にクビ差だけ屈した。

ジャングルポケットにマークされるような形になって最後に差されたとはいえ、これが王者の競馬だ。もうベストレースと言っていいくらいの競馬してる。感動した。

 

京都大賞典の時はこの秋は本当にどうなることかと思ったもんだけど、まだまだ強いんだこの馬は。当たり前だろ、テイエムオペラオーなんだぜ。なめんなよ。

 

 

引退レースの有馬記念は、中山競馬場へ観に行った。

当時は前売り入場券がないと入れなかったんだけど、仲間が手に入れて誘ってくれたんだよね。

 

いやー、その日も馬券が全然当たらなくてさぁ、メインレースが近づく頃にはもういろいろと考えを巡らせる余裕なんか無くなってたんだよね。体感で10kgは体重減ってたから。

どうせ当たらないなら・・・という、半分投げやり半分格好付けみたいな感じでテイエムオペラオーナリタトップロード馬連1点だけを買ってレースを観た。

 

いやー、マンハッタンカフェだけはないと思ってたんだけどなぁ。なんかすんごい荒れ方してるし。

とうとうG1新記録は成らなかった。というか、もうあの時は記録がどうとかじゃなくて、ただもう一度勝つところが見たかっただけなんだよ俺は。

負けたショックと引退の寂しさで、レース後は1時間くらい喋れなかったんだよ確か。言葉が出ないというか。

 

 

ナリタトップロード・6歳

 

年明けに行われた、オペラオー・ドトウ2頭合同での引退式も終わって、気持ちにもひと区切りついていた、翌年の春。

 

現役を続けていたナリタトップロード京都記念を勝って、さらに阪神大賞典ではあのジャングルポケットを負かした。

重賞連勝で、天皇賞では堂々の1番人気ですよ。G1で1番人気なんていつ以来なんだ?と思って今調べたらなんとダービー以来らしい。

必ずしも「人気=実力」と限らないのはわかっているけれど、なんかすごく嬉しかったんだよね。みんな応援してるんだなぁ。がんばれよ。

そしたらレース実況で「北海道のテイエムオペラオーも、トップロードの勝どきを待っているぞ」みたいなこと言うんだもんね。ホロっとしちゃうよね。

 

しかし、勝ったのはあのマンハッタンカフェだった。2着にはジャングルポケットで、トップロードは3年連続の3着に敗れた。

そうかー。(やっぱり)駄目かー。

悔しいけれど、仕方ないね。これはもう何も言うことがない負けだ。さらにその後ろにはボーンキングサンライズペガサスと、掲示板はナリタトップロード以外の4頭が4歳馬ですよ。

 

回る回るよ時代は回る。

思い起こせばオペラオーが4歳時の宝塚記念も、年上のグラスワンダーと一騎討ちムードの中でオペラオーが勝って、グラスはレース中の故障で引退、それで時代が動いたような印象もあった。

 

 

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テイエムオペラオー 24戦14勝 獲得賞金 18億3518万9000円 競走馬データ - netkeiba.com

 

俺はあの「無敵の8戦全勝」よりも、「王者として戦い続けて、最後の最後には崩れた」2001年のほうが強く印象に残っている。勝ったレースをそんなに見返さないのも、もしかしたらそういう部分があるのかもしれない。

 

2017年いっぱいで歴代賞金王をキタサンブラックに譲って、年が明けて2月に岩元調教師が定年で引退して、それから何ヶ月もしないうちに息を引き取るなんて、出来過ぎてるよなぁ本当に。

改めて「事実は小説よりも奇なり」な馬だと感じる。

あとは和田の、次のG1勝利だね。

 

***

 

今のところ産駒に平地重賞の勝ち馬は出てないんだけど、初年度にメイショウトッパーってのがいてさ、重賞で和田が乗ってたんですよ。もちろん、あのメイショウドトウの馬主さんの所有馬。

競馬界随一とも言われる寛大さでお馴染みのメイショウさんも、競り市で白井調教師から最初に勧められた時は「えっ、テイエムオペラオーの仔か・・・」とさすがに逡巡したらしい。

 

 

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