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朝井リョウ『何者』感想とみせかけて思い出話

朝井リョウ著『何者』読了。

SNSを活用する、現代の若者の機敏が丁寧に掬い上げられた良作。身につまされる箇所も多々あり。素直に受け止めたい。折に触れて読み返すであろう名著に、また出会えたことを喜ぼう。──@ajisaisukio

 

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから。

瑞月の留学仲間・理香とその恋人の隆良も交え、五人は就活大作として集まるようになるが……

ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかる──。

 

 って裏表紙に書いてあったよ。

 

 登場人物になんかうざいやつが出てきて、なんだコイツ~~~~!ってジョイマンのあいつが出てきた時みたいなリアクションしたり、いるいるこんな女wwwうっぜwwwとか思ったりして、鼻につく奴らを鼻で笑ってると鼻っ柱を折られるお話です。

 最後にあらーそうなるんかいうおーって感じで面白かった。お、俺はそんなことないもん!ってなった。

 でもなんかわかるよなー。主人公の感じも鼻につくやつの感じもよくわかる。何がすごいって出てくるやつどいつもこいつもばっちり成功はしてないんだよね。誰の何が正解なのか全然わからないまま終わる。でも、その中で何がマシなのかはちょっとわかるかもしれない。

 

 後半すごいんだけど一番最後の終わり方がなんかさらっとしてたな。たまたま直前に調子こいてアガサクリスティとか読んでたもんだから、知らないうちにハードルの高さが世界屈指のものになってたのかもしれない。

 というのは冗談ですけど、うーん、登場人物と同年代の読者を想定してたと考えると、あの終わり方が一番ですなぁという気もしてくる。っていうか作者って何歳なの。調べたらこれ書いたの23歳の時なんだって。平成元年生まれなんだって。すごいね。

 まあ・・・そのー・・・この小説を最後まで読んどいて、終わり方がどうだとか評してる俺もなかなかのもんだけどね。何人か読者ついただけでもう何者かになったつもりですか。ウォンビン火炎瓶。

 

 そんなことよりなんか読んでていろいろ懐かしかったわ。俺にもイケメンの友達いたなー。それを鼻にかけるようなことは全くなくて、むしろみんなからいじられる感じだったりすんの。

 モテるのにイケてるグループには入らないで俺みたいなのとつるんでみたり、といって人生の悩みを相談してくるような感じではなく、それでいてあーそんなに俺のこと信頼してんのねみたいな時もあったりして。不思議なやつだったな。読みながらちょっと光太郎に重ねちゃったよ。

 

 いやーしかし俺の時代にツイッターなくてヨカッター。俺のときにあったら絶対やってないふりしながら毎晩布団の中で友達のアカウント覗いて惨めな気持ちになってるだろうな。輝いてる(ように見える)友達と自分を比較した結果の惨めさ、それを暗いところから(と自分で思いながら)覗いていることへの惨めさ、心が参ると書いて惨めですよほんとに。

 そう考えると多感な時期からずっと見えなくてよかったものもたくさん見てきたぶん、平成生まれの絶望は相当に深いのかもしれない。心の健康は~~~大事~~~坂東は~~~英二。

 いやでも俺が社会人になった頃はツイッターはなかったけど、ツイッターじゃないのはあったぞ。趣味で何かしら活動してるやつはホームページ作ったりしてそこでアピールしてたもんなぁ。もう当時はインターネットが普及して、何でもかんでもとりあえずワールドワイドウェブに向けて発信!夢がひろがりんぐ!みたいなとこあったし。

 俺も携帯でネチネチとホームページ見てたなぁ。なんかキリ番ゲットしちゃったりして。でも当時はみんなページ作って満足、たまにひと言日記を更新するだけ、みたいなところもあったからまだ牧歌的なほうだったのかもなぁ。フェイスブックネイティブ世代はたまらんだろうな。

 

 

 文庫本の表紙に映画の出演者が載ってるんだけど、いつもブックカバーするから見なくて済んだ。見ちゃうと読んでる時にその顔のイメージになっちゃうの嫌だもんね。そんで読み終わって出演者の顔を見たら映画つまんなそうだなーという気がしちゃった。巻末の解説が薄ら寒かったのもある。

 そういえば桐島も映画観てないんだった。すごい賞とか取って面白いらしいんだけど小説のまんまな感じなのかな。

 

 

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)