ハーツクライって最初はそこまで好きって感じでもなかったけど、いきなり強い馬になってびっくりしたよなぁ、というお話。
3歳
いきなりダービーからなんだけど。
この時はものすごい勝ちタイムが出て、勝ち馬を含めて出走した多くの馬が後に故障したり、しばらく調子を落としたりしたんだよね。まあ馬場との因果関係がどの程度なのかはわからんけどさ。
俺の本命コスモバルクは皐月賞でのやや消極的な競馬とは打って変わって、めちゃくちゃ積極的に攻めて早々に沈んだ。馬が我慢できないのもあったのかもしれないけど、結果的に春はことごとく裏目に出てしまったんだよなぁ。残念だった。
外からハイアーゲームと並んで上がっていったキングカメハメハが他を競り落として、ずごーんと突き放したところに、遊びで枠連の軸で買ってたハーツクライが大外から2着に飛び込んできた。
橋口厩舎&横山典で2着なんてあったりしてねゲヘヘと思って買ってたんだよ。我ながらしょうもないことするよなぁ。あれは「当てた」ってより「当たった」って感じだったけど、そこそこ配当ついたから地味に嬉しかったんだよね。一緒にテレビ中継を見ていた友達はキングカメハメハとハイアーゲームの馬連に厚く張って散った。
秋は武豊に手が替わって、菊花賞は1番人気。え?この馬が1番人気?急に?
まあハイアーゲームも前走負けてるし、コスモバルクが距離持つとは思えないし・・・って感じで押し出される形だったような気がする。京都で重賞を勝ってるのもあるか。
そんなんでまともに決まるわけもなく、人気になったダービー上位組は全部馬券にならずに、勝ったのはデルタブルースだった。
結局ハーツクライも7着に敗れて、続くジャパンカップ・有馬記念も惨敗。
いやー好きなんだよね、この橋口厩舎の王道ローテ。ツルマルボーイ、ザッツザプレンティ、ハーツクライ、リーチザクラウン、ローズキングダム、ワンアンドオンリー、見込んだ馬には王道を走らせる。必ず使ってくるがゆえに、どこが買い時なのかよくわからないけど。
ということで、翌年も王道ローテーションを進みます。
古馬
大阪杯。
同期のダービー馬キングカメハメハは故障で引退、地方所属のコスモバルクは日経賞で負けたので次の天皇賞には出られない、ダイワメジャーはマイル路線へ、デルタブルースはちょっとお休み。
だからハーツクライ、お前がゼンノロブロイvsタップダンスシチーの2強に割り込んでいくんだよ!ということで、前年秋の負けには目を瞑って1着固定の馬単を買ったら2着だった。そういえばこのレースがきっかけになって、馬単ってまず買うことがなくなったなぁ。
しかしG2級の相手になんとか2着を確保、みたいな競馬はさすがにちょっと期待外れだわ。
どうやら長距離向きってこともないみたいだし、そもそも大阪杯で負けてんのにここでは買えませんよねぇ、と思ってたらもっと買えないスズカマンボ ─ ビッグゴールドで決まって、わけのわからん荒れ方になった。俺の常識が全く通用しない・・・。
いやーしかし1年前に負かし続けたスズカマンボのほうが先にG1馬になるとは。若い頃にはどっこいどっこいだったハーツクライにもそのうちチャンス回ってくるといいけどねぇ。
宝塚記念。
タップダンスシチーが3コーナーで前を早めに交わして敢然と先頭に立ち、よっしゃかかってこいよゼンノロブロイ!と思ったらパタッと止まっちゃうんだよ。あれ?っつって。
そしたら全くノーマークだったスイープトウショウが外から一気に抜け出して、また常識が通用しない・・・!と私の灰色の脳細胞が停止してたら、最後の最後にハーツクライが2着に飛び込んできてなんだかほっとした。
ああ、この2着だけは俺の常識の範囲内だ。この馬が2着だとなんとも言えない安心を感じられるんだよ。かわいい奴だ。秋も頑張ろうな。
天皇賞ではスローの展開を許したタップダンスシチーが、今回は破茶滅茶なハイペースで逃げる。いつも通りに後方に構えたハーツクライは最後の最後に内から馬群を縫って一気に伸びてきた。うわマジか!とびびったけど惜しくもアルカセットにハナ差の2着だった。
まーた2着か。でもこれまではレースが決まったところに流れ込んでくる2着だったけど、今回はそれとは違う、勝ちまで見える2着だったような気がする。
あのダービーも好走したし、母父トニービンだからハイペースに強いのかな。それとも東京2400mが得意なのか?
まあ、なんにしてもあのダービーからやっと復調してきたのに、またこんなレコード決着で消耗しちゃって、ここで勝ち切れなかったのは残念だったわ。
もうお釣りもないだろうし、次は追い込みの効きにくい中山だし、なんたって相手が無敗の三冠馬ディープインパクトだからね。
有馬記念。
競馬はわからん。俺はディープインパクトを見に中山競馬場に行っていて、ハーツクライが3番手で1周目のスタンド前を通過するのを見た。
この馬そんなこと出来んの?ルメールはすごいなぁ。とはいっても付け焼刃みたいなものでしょ、今まで追い込み一辺倒の馬がいきなりそんな、ねえ。(でももしかしたら3着はあるかもなー、買ってないんだよなー)
そうしたら今度はコスモバルクが早め先頭で4コーナーを回ってきて、うおー!バルクだー!と声を上げた。しかしこの時点でもまだディープがまとめて差し切るだろうと思っていて、頭の片隅で(あ、ハーツクライ3着あるかもなこれ、まずいな)とうっすら感じる程度だった。
そしたらなんかハーツクライが全然止まらないんですよ。いや話が違うよなんだよこれ違う違うだめだめだめだめ届かないいやいやいやいやおかしいおかしいおかしい嘘だろ嘘だろ届かないよこれやばいやばいマジかよマジかよマジかよ頼む頼む頼む頼む差せ差せ差せ差せ頼む頼む頼む。
手遅れだと気付き始めて「差せーっ!!」と叫んでいたけど、それはもうほとんど現実逃避だった。
ショックが大きかったので、レース後の雰囲気とかあんまり覚えてないなぁ。
なにこれ?今までの不器用な追い込みはなんだったの?よりによって何でこのタイミングなの?
友達にグチグチ言いながら、寒い中タップダンスシチーの引退式見て帰ってきた。
そしたらハーツクライがこの年の最優秀4歳上牡馬だって。じゃあ大阪杯くらい勝てよなお前。
まあこの年のG1勝ち馬を眺めた感じ、仮にディープインパクトが有馬記念勝ってたとしらハットトリックが受賞してたっぽいので順当ではあるんだね。
とりあえず、次のレースだよ。次のハーツクライの競馬を見てみないと何とも言えない。また大阪杯なら人気するだろうな、ってドバイ行くんかーい。すごいことになってきた。
なんか覚醒したんですけど
俺どっちかっていうと同じ橋口厩舎のユートピアの方が好きだったのよね。ハーツクライと一緒にドバイに遠征してて、レースも生中継で見たわけじゃないんだけど、ゴドルフィンマイルでユートピアが勝ったのは本当に嬉しかった。
ハーツクライのほうは、逃げ切りでウィジャボードぶっちぎったとかって知ってなんかポカーンとしちゃった。どういう流れの逃げからどう逃げ切ったのか全く想像がつかない。
っていうかあのハーツクライがこんなに強くなっちゃって、なんかリアクションできないよ。アッガイが宇宙でガンダムをボッコボコにしてたらびっくりするでしょ。
当時プレステの『ジーワンジョッキー4』をよくやっていて、この馬の脚質どうエディットすりゃいいんだよって本当に困ったもんだった。逃A先B差C追Aみたいな。
そうなると自在脚質ってのに分類されちゃって、いやいや自在って言葉からはほど遠い馬なんですけど・・・っつって。スズカマンボはスズカマンボで距離適性(2000m~3200m)みたいに幅広くなっちゃうし。
キングジョージVI&クイーンエリザベスS。
まさか1年前にはスイープトウショウのケツ追っかけてたハーツクライが、こんなところに挑戦するとは夢にも思ってなかったよ。いや挑戦ではない。「海外"挑戦"でなく、海外"遠征"と表現しようよ」と橋口調教師が言っていた。
この馬だって、ディープインパクト負かして、ウィジャボード負かして、もうどこの誰にも胸を借りる立場じゃないんだよな。充分な勝算があっての遠征だよ。ゆけっ!ハーツクライ!
レースは内のハリケーンランを封じながら直線でエレクトロキューショニストを交わして、ウオ大おおおおおおおおおおおおおおおおってなったけど最後は両馬に差し返されて3着だった。
すごい!すごいけど、惜しい!もうちょっとだったのに!・・・でも頑張った!大したもんだ!という感じ。ハーツクライが一番強い競馬をしたようにも思えるけれど、それでも地力で上回ったのはハリケーンランだった。
最近はドバイに7~8頭くらい遠征して誰も勝てずに帰ってくると批判の目が向いたりもするけど、この時のハーツクライはなんというか、勲章は手に入らなくても名誉には与った、みたいなところもあったよね。
特にこの時は少し後にディープインパクトが凱旋門賞に出走する予定があったから、この馬の好走が夢を繋いだというか、計算が立ったというか、やれる!という雰囲気にした部分もかなりあったよね。
凱旋門賞から帰って来たディープインパクトとの再戦。でもまあハーツクライが一回負かしてはいるとはいえ、この年の春の天皇賞を見たらさすがにディープに敵う馬なんていないと思っちゃうよ。
それと、たしかこの時ハーツクライはあんまり調子良くないみたいな話をどっかで見たんだよなぁ。Wikipedia見たらレース前に橋口調教師がノド鳴りを公表してたんだって。
それでも2番人気で単勝5.8倍。ディープインパクトの2番人気はほとんど10倍超えちゃうから、G1でここまで人気で迫ったのってこの時のハーツクライがたぶん一番なんだよね。
でも、結局ハーツクライは大敗して、そのまま引退が決まった。
イラストはぽちこさんより。
ハーツクライ 19戦5勝(2着4回) ハーツクライ | 競走馬データ - netkeiba.com
俺の中では今でも2着のイメージが強いんだよなぁ。今回振り返りながら書いてみて、あぁそういや強かったんだよなあの馬、と思い出した。
この馬の代表産駒とも言えるジャスタウェイは2着続きから4歳秋に天皇賞でいきなり圧勝して、翌年ドバイでも勝って、そのへんは父親に似たのかね。ヒーロー列伝の写真も同じ構図で作られてるし。
あとG1で2着がやたら多いよね。ウインバリアシオン、ヌーヴォレコルト、カレンミロティック、リスグラシューとか、他にもいろいろ。そんなのも遺伝するの?血ってのは本当に不思議だ。
しかしこの世代は、キングカメハメハ、ハーツクライ、ダイワメジャー、3頭もリーディングサイアーの上位にいるなんてすごいね。スズカマンボもメイショウボーラーもG1馬出してるし、あーブラックタイドもこの世代か。すごいね。カンパニーもがんばれ。