よし、じゃあアドマイヤグルーヴの話するよ。
-祖母エアグルーヴ
-子ドゥラメンテ
4代続けてG1レース制覇となりました。日本競馬初だって。
めでたい!のかどうかは不明です。単純に好きだったアドマイヤグルーヴの子供が勝ったので、そのことについては個人的に嬉しい。あと馬券も当たって嬉しい。
ちなみにその4頭の中で、アドマイヤグルーヴだけ勝ったG1がクラシックレースじゃない。この馬は牝馬三冠レースで全部1番人気だったけど全部負けた。
もう一度言います。全部1番人気だったのに、全部負けました。
でもねぇ、やっぱり俺はアドマイヤグルーヴが大好きなんですよ。
女帝エアグルーヴ
まず母ちゃんのエアグルーヴだけど、まー強かったんだこれが。
俺が競馬を見始めた1990年代中~後半は牡馬と混合の大レースで牝馬が通用するのなんて、マイル以下の短距離路線くらいだった。それもごく一部だったのよ。
近年で言うと、牝馬限定戦ではどんなに強くても牡馬には勝てないアパパネ、短距離では稀にカレンチャンみたいのが出てくる、という感じが近いだろうか。
しかしエアグルーヴは牡馬の一線級相手に、それも出し抜けではなく真っ向から勝負して天皇賞を勝つ。とにかく並んだら抜かせない根性が凄まじいと言われてた。
前哨戦なんかでも、俺の好きだったサイレントハンターあたりでは全く相手にならない安定した強さだった。札幌記念で実況アナウンサーが「このクラスでは全然相手になりません」って言うんだよ。笑っちゃうよね。
引退レースの有馬記念は、落鉄の影響もあってか5着。
鈴木淑子さんが「日本で5番目に強い馬です」みたいに前向きに悲しんでた。
命名
1983年のオークスを勝ったダイナカール、その父はノーザンテースト。
そこにトニービンを掛け合わせてエアグルーヴが生まれ、さらに今度はいよいよサンデーサイレンスを掛け合わせる。
非常にわかりやすい良血の配合で初仔・エアグルーヴの2000が生まれた。
その夏のセレクトセール、具体的にいくらか忘れたけど軽く2億円を超えるような高額であの「アドマイヤ」の近藤さんが競り落とした。
今はもうバンバン1億円ホースが出てるけど、当時は牝馬で2億とかっていうのはちょっと考えられなかったから、相当大きな話題になったんだよ。
そして競馬ファンのみなさんの夢ともいえる存在、「エアグルーヴの2000」の馬名は、寛大な心を持つ馬主さんの意向により、ファンから一般公募されることとなった。
なんと!
あの馬主さんなら冠名と母親の名を組み合わせて、誰にもわかりやすい馬名をつけるであろう。競馬ファンの誰もがそう思って(諦めて)いたのに、もしかしたら自分があの馬の名付け親になれるのかもしれないのだ!やったね!
たくさんの名前が集まった。のかどうかは知らないが、厳選なる審査の結果、なのかどうかも知らないが、馬名は「アドマイヤグルーヴ」と決定した。
デビュー
「この血統なら間違いなくG1は勝てる、問題はいくつ勝つかだよね?」
そんなダビスタ脳の俺の期待通りに、デビュー戦を勝利。騎手は母ちゃんと同じ武豊。
その勝利からあまり日がないので、暮れのG1・阪神JFには1勝の身で登録したら抽選で落ちて除外になっちゃったよ。なんだよー。
まあ目標は来年だし、そんなに急いでもしょうがないか。そんな慌てなくたって来年G1勝つんだから。
この阪神JFでめちゃくちゃ強い勝ち方をしたのが、福永のピースオブワールドだった。本当に強かった。こいつもサンデーサイレンス産駒、これで4連勝。
この勝ち方を見て、来年のクラシックはこの馬との一騎打ちになるだろうと思った。桜花賞であの馬に勝てれば、牝馬三冠も見えてくるな。
とりあえず翌週のエリカ賞へ出走して快勝、春を待ちます。
さぁクラシック
桜花賞に向けてどこ使うのかなー、ここまで中距離を使ってるんだからフラワーカップかな?
違いましたー。若葉Sでしたー。嘘でしょ!?なんかこの時期の中山の荒れた馬場で走らせるのが嫌なんだってさ。
勝たないと桜花賞に出られない状況なのに、牡馬相手にレース使うなんて無茶苦茶するよなぁ。いくらエアグルーヴの仔だからって言ったってさ……
まぁなんとかギリギリで勝ったんだけど、本当にヒヤヒヤしたよ。
これ、もし2着だったら皐月賞に出てたのかな。
もしそうなったら、展開によっちゃネオユニヴァースのデムーロに頭を叩かれたのは、武豊だったかもしれない。こういう"If"が競馬の醍醐味だよね。
チューリップ賞では川島信二のオースミハルカが勝って、直線で行き場を失ったスティルインラブが2着。
フィリーズレビューは阪神JFで大穴の2着だった、安藤勝のヤマカツリリー。
フラワーカップは横山典マイネヌーヴェルの鬼脚が炸裂した。ありゃすごいわ。有名な追い込みレースってのはいくつかあるけど、これも何回見てもすごい。あの豪脚に魅せられて、しばらく買い続けて毎回泣く人が大量発生したらしい。
ライバルになるはずだったピースオブワールドは、残念ながら故障して休養入りしてしまった。
桜花賞。
アドマイヤグルーヴが1番人気で、同オッズのスティルインラブが2番人気。
スタートはアドマイヤグルーヴだけ出遅れた。他の馬みーんな揃ってゲート出てるのに、1頭だけ本当に綺麗な出遅れなの。なんか10人くらいで輪になってジャンケンして、ジャン、ケン、ポイ、って1発目でひとりだけ負けたみたいな感じだった。
最後は外から伸びたけど、スティルインラブに届かず3着。ちょうど出遅れたぶんくらいの差で負けてるんだよなぁこれ。
まぁよく知らないけど幸って騎手は初G1らしいし、顔もインタビューの受け答えも爽やかだからなんか許しちゃおうか、ね。
そもそもアドマイヤグルーヴにマイルは短い印象があったし、それでもよく追い込んだほうなんじゃないか?スティルインラブがマイル向きだったんだよ、きっと。ははっ。
……そうそう、そうだよ。大目標は次の「母子3代オークス制覇」なんだし、こっちはどう考えても距離が伸びてこそなんだからこれもう確勝でしょ。ありがとうございます。
似たようなことを思っていたファンは多かったらしく、桜花賞ではほぼ並びだった単勝オッズもオークスでは一気に差がついて、2強ではなくアドマイヤグルーヴ"1強"のオッズになった。
春は絶望って言われてたピースオブワールドも、無理してここに間に合わせてきた。急仕上げでぶつけるのはちょっと無理がありそうなもんだけどどうなんだろ。
でもやっぱりそれだけ期待されてたんだよね、この馬は。牝馬のクラシックは春だけなんだから尚更だわ。
アドマイヤグルーヴはまた出遅れ。それでもなんとかなると思ったのに、結果は7着で勝ったのはスティルインラブ。本当に強かった。
はぁ……。まあ母子3代オークス制覇に関しては、まだ初仔なんだから毎年サンデーの仔とか出せばまぁそのうち勝てるでしょ。ダビスタ脳なめんなよ。
あれ、なんかおかしくね
あれ?なんか春のクラシック終わっちゃったけど。勝ってないんだけど。なんかおかしいよね。なんかおかしい。
桜花賞はピースオブワールドがいなかったんだから、アドマイヤグルーヴが勝ってないとおかしい。辻褄が合わない。そのどっちでもない馬が春二冠なんて話が違うよ。
あのーあれだよ違うの、えーとねぇ、スティルインラブは春の時点で馬が完成されていたんだろうけど、アドマイヤグルーヴはこれからが本番なの。母ちゃんだって古馬になってあの勝負強さを発揮したんだし、勝負は秋なのよ、あ・き。
牝馬三冠・最後の秋華賞はクラシックレースじゃない、というややこしい話なんだけど、とにかくそこを勝つことを目指していくしかない。何としても勝たねばならないんだこの馬は。
ローズステークスはスティルインラブのほうが1番人気。なめやがって……。
というわけでここはアドマイヤグルーヴがスカッと勝ちました。はい本格化ー。ありがとうございます。みなさーん、アドマイヤグルーヴがついに本格化しましたよー。スティルインラブは5着。
秋の華
秋華賞。
再びアドマイヤグルーヴが1番人気。
スタートは普通に出た。よしよし。
スティルインラブが中団外め、アドマイヤグルーヴはピッタリその後ろを走る。先に動いたライバルを徐々に追い詰めたけど、最後は脚色が同じになってしまって、結局わずかに届かなかった。
また負けちゃったよ……最後のチャンスだったのに……なんで……
牝馬三冠か……やっぱり三冠獲るような馬ってのはこんなに強いんだな……
色々な感情がごちゃ混ぜになって、ちょっと涙ぐんだ。
競馬のレースが涙腺に訴えかけてきたのってこれが初めてだったんじゃないかな。
いやー、どうしよう。もう負けた言い訳が残ってないよ。
っていうか強い。素直にスティルインラブが強い。悔しいけど、納得だわ。
もちろん1番人気はスティルインラブ、そりゃそうだ。三冠牝馬だもん。しかもひとつ年上のファインモーションも、アドマイヤグルーヴに武豊が乗る関係で出てこない。
最後は完全に2頭のレースになった。直線は併せる形で伸びてきて、わずかに外のアドマイヤが先に出るんだよ。
やっとG1馬になれた。やっとG1でスティルインラブに勝てた。
よかった……一時は本当にどうなることかと……
この1勝で全部チャラになったとは思わないけど、それまでと比べて肩の力を抜いて見られたぶんだけ、嬉しさを噛み締めることができました。地球に生まれてよかったー!
そんでこのレースの何がいいかって、残り100mくらいでアドマイヤグルーヴが差し切って先頭に立ってるんだけど、そこからスティルインラブもまた盛り返してるんだよね。いい勝負だった。
古馬牝馬
古馬になってからは、共に牡馬にはほとんど歯が立たなかったよ。
特にスティルインラブはもう燃え尽きてしまったのか、結果的にはほとんどいいところなしになってしまった。
小倉のハンデG3に重いハンデで出走して惨敗したかと思えば、牝馬限定戦でも勝てなかった。
でも、あの馬が強かったレースを忘れることはない。
アドマイヤグルーヴは秋の天皇賞でどうにか3着に入って、その後にエリザベス女王杯で勝利して連覇を達成した。これは気持ちの良い勝ち方だった。
翌年は春の天皇賞も走ってみたりしたんだよね。めっちゃ負けたけど。
そして5歳秋のエリザベス女王杯。
スティルインラブは直前で引退していた。もう5歳牝馬だもんね。
アドマイヤグルーヴのほうも、まる1年の間レースで上位に入れていなかったので、武豊ももう他の馬に乗るようになっていた。そりゃあ最盛期の武豊だもん、勝てない馬にいつまでも乗ってないよ。
そして、その武豊が乗るエアメサイアが1番人気になった。許さん。ということで、わたしはアドマイヤグルーヴとスイープトウショウの1点買い勝負をした。
レースではスイープトウショウが勝って、アドマイヤグルーヴもよく伸びたんだけど、逃げたオースミハルカが2着に残っちゃって1着-3着でやんの。許さーん!
あーあ。でもまだ牝馬同士ならやれないことはないんだな。最後にもう一回いいとこ見たいけど、さすがにそろそろ引退も近いよね。
ということで、次の阪神牝馬ステークスを最後に引退が決まった。
なんか武豊乗ってくれるって。やったね!これで勝たせてくれたら最高だけど、なんか強い馬いるし、マイルもどうだろうね。まあとにかく最後のレースを応援しよう。
めっちゃ逃げたラインクラフトを手応え良く交わして、そのまま粘りこんで、勝った。勝った!
競馬やってて、好きな馬がこんなに美しく幸せに引退するのなんてめったに見られるもんじゃないから、本当に幸せな瞬間だったね。「おいおいなんだよ、普通にマイルもこなせたんじゃねーの?」なんて言いながら。
写真はRINOT*さんより。
アドマイヤグルーヴ 21戦8勝 アドマイヤグルーヴ|競走馬データ- netkeiba.com
スティルインラブ 16戦5勝 スティルインラブ|競走馬データ- netkeiba.com
では問題です。同世代の国内の牝馬で一番賞金を稼いだのは、この2頭ではありません。ちなみにこの文章の中に名前は出てきていませんが、どの馬でしょう?
答え:メイショウバトラー(反転すると答えが出ます)
もし違ってたらごめんね。あとスマホだと丸見えになっててごめんね。
しかしいくらサンデーサイレンス全盛期だからって、出てくる有力馬サンデーばっかじゃねぇかよ。この世代は牡馬もそうだ。
そういう意味で、ヤマカツリリーには一風変わったファンが結構多かった気がする。