はぁ・・・じゃあキズナの話しますね。
いつもいつもそうだけれど、競馬のひとつの時代というのは突然終わりが来る。
キズナ
ディープインパクトの産駒で、デビュー前からけっこう評判良かったらしいね。武豊が自分のブログでファレノプシスの下が良い感じって話に出してて、へぇ、そういうこと言うの珍しいなぁと思ってた。
まあ、この馬名はねー。なんと言いますか、好みが分かれると言うんでしょうか。まあすぐ慣れたけど、最初はなんかこう、"キメたった感"が強く出てて俺は若干の抵抗を感じてしまった。ウオッカみたいに、既に相当な手応えがあるパターンなのかな?
デビューは2012年の秋。新馬・特別と格好良く連勝して、暮れのラジオNIKKEI杯へ。
ここにはシーザリオの初仔・エピファネイアも同じく2連勝で出走してきた。鞍上は福永。
な・・・なんだよ。向こうが一番人気かよ。た、確かに新馬の末脚はケタ違いだったけどさ。どうせクラブの会員がみんなして突っ込んだんじゃないのか?
まあまあシーザリオはけっこう好きだった馬だから、そこに免じて軽く相手してやってよ、なんて思ってたら逆にエピファネイアに軽く勝たれちゃった。もう4コーナーの手応えから全然違うのよ。
キズナは超スローペースの2番手にいたのに外から余裕で交わされてしまったし、あろうことか逃げたバッドボーイに差し返されて3着。これは正直ガッカリした。すごくガッカリしたし、なんかもうエピファネイアに腹が立ってくる始末。
なんとかクラシックに乗ってほしい
年明け初戦は弥生賞。まあね。なんてったって有力馬だからね。そこんとこヨロシク。
またエピファネイアいるよ。鞍上はビュイックで1番人気。なーんか無敗で堂々としているように見えて腹立つなぁ。
コディーノも出走してきたので、キズナはなんと3番人気。なんか・・・なめられてないか?
レースはエピファネイアが抜け出したところに突っ込んできたカミノタサハラとミヤジタイガで万馬券。なんじゃそれ。キズナは後ろからちょい伸びな感じで5着だったかな。
終わった。だめだ。これもうクラシックは無理だ。来年の目黒記念、もしくはサマー2000で会いましょうってか?あーあ。やんなっちゃうねほんと。絶望だよ。
あまり間を空けずに毎日杯。このローテーションの時点で、ダービー出られたら嬉しいなって感じだね。まあ一番肝心なところで連敗したんだからしょうがない。しょうがないよ・・・
とりあえず後方に構えて、大外を回って綺麗に差し切る。この時の勝ち方が父ディープインパクトそっくりなんだよねー。
なんだよやっぱ強えーんじゃんかよ不安にさせやがって。お前どんだけ俺が絶望先生だったかわかってんのかよ。
でもまぁ、ここで勝ったところでダービーでいいとこ狙えるかどうかなんて、ねぇ。
皐月賞。
けっこうペース流れてるのにエピファネイアは引っ掛かって負けるし、コディーノはぜんぜん伸びない。なんだよ大したことねぇなお前ら。
そんでロゴタイプがもう強いのなんのって。父親のローエングリンと違って大舞台でなんと強いことか。これでもうG1はふたつめだよ。
キズナは予定通りにこっちへ。今回も4コーナーまでじっと後方に控えて、胸のすくような大外一気の差し切り勝ちを決める。
もうこういう競馬でいくってことか。ちょっと希望が出てきたぞい。ぞいぞい。
次はいよいよダービー。
キズナはスタイルを確立して連勝中、ロゴタイプは確かに強かったけどダービーよりは皐月賞のほうが条件が合ってる感じがする。コディーノは脱落気味、エピファネイアは距離持つかどうか?不気味だけど。
・・・あれ?なんか、あれ?
キズナ、いけるんじゃないの?
日本ダービー
この日はめちゃくちゃ暑かったよねぇ。
なんとキズナが1番人気!皐月賞出てない馬が一番人気って珍しくない?ほぼ並んでロゴタイプが2番人気。続いてエピファネイア。あれ、コディーノは騎手が変わってるぞ。
レースはそれぞれのスタイル通りの位置取り。エピファネイアが向こう正面でちょっと躓くがそんなに大したことはなさそう。
キズナは4コーナー回っても後方、ロゴタイプはさすがにいつもほど強気には仕掛けてこない、そんな中、馬群の中からいい感じに穴馬を交わしてエピファネイアが先頭に立った!
・・・駄目だっ!それだけは!やめろー!
何だ、何か来た!キズナ!差せ差せっ!
よし、よし!よし!ふぅ、あっぶねぇ・・・
もうさ、エピファネイアが抜け出した瞬間は現実逃避しかけたもんね。
ほっとした。とにかくほっとした。ありがとうキズナさん。
と安心したのもつかの間、今度は「なんだよまたユタカかよ!」とイラッとしてしまった。直後、「ん?"また"って何だ?」と我に帰る。俺の頭の中どうなってんだよ。
この頃の武豊はキャリアの中でも不調期といえるくらい成績が伸びていなかった時期だったのに、【俺が過去に何度も何度も繰り返し味わった、負の感情】がしばらくぶりに条件を満たされて、反射的に顔を出したらしい。アンチだった頃の記憶、負け犬根性とも言う。
まああれだね。ひとつ思うのは、過去にアドマイヤベガで一度この勝ち方・乗り方をやっていたのが大きいのかもしれないな。やっぱり武豊の武豊による勝利なんですよ。
このレースは「武豊復活のダービー勝利」と色々なところでよく言われた。この頃の武豊は本当にキズナさんくらいしか有力馬がいなかったもんね。
何にせよ、武豊にはダービー勝利が本当によく似合う。
俺は頭がおかしいから、この時メイケイペガスターから買っていた。仕方ないよね、頭がおかしいんだから。
それぞれの秋、大一番へ
キズナさんは凱旋門賞、エピファネイアは菊花賞、コディーノは天皇賞を目指すことになった。ロゴタイプは札幌記念で調子崩してしばらくお休み。
もうこの秋から目指すところは別々になった。
二エル賞。
キズナさんどれくらいやれんのかね、どう乗るのかね、ロンシャンの馬場合わなそうだよね、なんとなくだけど。なんて思って見てたら自分のスタイルそのままに乗って、ゴールの瞬間は一瞬負けたかなーと思ったけど勝っちゃったよ。
マジかよ、向こうのレースで日本のダービー馬が英ダービー馬負かしちゃったよ!武豊も嬉しそう。というか、誇らしげだった。
エピファネイア楽勝。引っ掛かって潰れるのを期待して他の馬を買ってたから、あーあ、しか感想がない。
凱旋門賞。
俺は「オルフェーヴルが勝つ姿を見るレース」だと信じて疑わなかったから、まあキズナ君も頑張ってよ、くらいにしか思っていなかった。日本勢"第二の矢"、とも思っていなかった。
レースではオルフェーヴルが中団やや後方、キズナはその後ろにつける。トレヴが先に外から上がっていったのに合わせて、キズナも早めにこれを追いかける。
その過程でキズナの武豊は、内にいたオルフェーヴルの進路を全く空けることなく上がってゆく。これはしびれた。今までの武豊の騎乗で一番しびれたよ。やっぱり武豊は格が違う。
同じ日本馬だからって道を譲ったりしないのは、仲間とかラインとかそういう次元で勝負してないからなんだよ。俺が勝つんだからお前は引っ込んでろよ、ってことよ。
日本馬が凱旋門賞でそういうレベルのレースをしてるのすごくない?マラソン大会みたいに「最後まで一緒に走ろうね~」とかやってんじゃないんだよ。
結局そのままトレヴが抜け出して勝利、オルフェーヴルは2着、キズナは最後伸びきれず4着に敗れる。
全力でぶつかった結果とはいえ、この馬の場合はまだ来年があるからね。未来には充分期待できる内容なんじゃないかな。負け惜しみではなく。
菊花賞。
有馬記念で対決かって話もあったけれど、結局はどちらも回避して来年に備えることになった。
古馬として
大阪杯。
はい来ました。ダービー以来の、2頭の久々の対決。
なんかねぇ、なんか知らないんですけどねぇ、ネット上ではエピファネイアのほうが人気になってるんですよ。なんで?報道もエピファネイアエピファネイアってうるさくて、これは本当にイライラさせられた。
まぁそうは言っても当日になればキズナが1番人気でしょうよ、と思ってたら最終的にエピファネイアは1.9倍で一番人気、キズナは二番人気の2.4倍だったんですよ。なんで?
しかーし、結果はキズナさんの気持ち良い差し切り。久し振りに競馬でスカッとした。痛快だった。
人気になったほうはトウカイパラダイスを捕まえられず3着。ちょっと消極的にも見える騎手の乗り方が批判されてたけど、まあまあそのへんのことも含めて「人馬」ですから。ガハハ。
今、書きながら、あの初対戦のラジオNIKKEI杯をそのままやり返したようものだな、と思った。
この後、エピファネイアは香港のレースへ遠征して4着。
あらら、キズナさん1番人気ですよ。それにしても妙にオッズが低い気がするけど。
直前に武豊が情熱大陸で特集されてたらしくて、まぁどうせその影響だろうな!って馬券売り場で近くにいたおじさんが言ってた。
まあ買ったけどね。キズナさんから買ったけどね。他に買いたいのいなかったんだもん。
そしたら4着ですよ。ゴールした時点で前に3頭も馬がいる。なんだか妙に納得というか何というか・・・あーやっぱり駄目だよね、と思った。
残念ながらレース後に骨折が判明し、今年は凱旋門賞は目指せないことになってしまった。残念だったなぁ本当に。
何なんだ、この馬!?
その年の秋、エピファネイアは天皇賞から始動して、そこで負けた後にジャパンカップへ。
ここでは福永がジャスタウェイに乗るため、騎手はスミヨンに変わった。
スタートからもうずーっと掛かりっ放し。大きいレースでこれだけ掛かり通しなのもなっかなか見ないよ。2400mのレースなのに2000mくらい掛かってたもん。3番手の内で騎手が必死で手綱を抑えてて、4コーナー回ってもまだ引っ張ってんの。
あーららこれは潰れるわ。どれが差してくるのかなー、と思った途端、エピファネイアがグングン抜け出して圧勝した。
何なんだ、この馬!?
だって・・・ずっと引っ掛かってたじゃん。折り合いを欠いた競馬はスタミナを消耗するんじゃないの?計算が合わないよ。レース中に課金アイテムかなんか使ったのか?
エピファネイアがここまで強い競馬するのも驚きだけど、これだけ大きなレースであんなに掛かり通しのまま圧勝する馬がいるなんてなぁ。とんでもねぇわ。
この後数日間、YouTubeでこのレースを見て、強えー、うわー、何なんだこれ、うわー、つえー、って一人で呟くのを何度も繰り返していた。
折り合いってなんなんだろう。競走馬の能力ってなんなんだろう。今でも全く理解が及ばないレースだわ。
有馬記念。
キズナはここでの復帰を目指していたが間に合わず。エピファネイアは積極的に乗ったが最後止まってしまって5着くらい。
切ない2015年
京都記念。
みなさーん!キズナさん復帰ですよー!
なんかハープスターとかいるけど少しも寒くないわ。・・・ってハープスターが1番人気なの?またこのパターンかよ、やれやれ。武さんキズナさんやっておしまいなさい。
と思ったらキズナは3着、ハープスターはそのさらに後ろ。勝ったのはダービーで歯牙にもかけなかったラブリーデイだよ。この馬、前走でロゴタイプも負かしてるんだよね。
おいおいこんなところで負けてる場合じゃないだろ・・・というのが正直な気持ちだった。まあずっと休んでたんだからしょうがないよな、休み明けの走りとしては及第点だよな、と頭のどこかで思ってはいても、感情がざわつくのを抑えられなかった。
出ました、1着賞金600万ドルのレース。エピファネイアよ、賞金2億5000万円のジャパンカップを勝っただけではまだ足りないのか。
初ダートということでそこがどう出るかと思われたが、全くレースについてゆけずにドベ負け。まあまあこれはしゃーない。次頑張ろう。
次頑張ろう?
ん?なんなのこの感じ。
大阪杯。
キズナ出走。断トツの1番人気。そりゃそうじゃ。ゆけっ!キズナ!
あろうことか、牝馬のラキシスに負けてしまった。その馬上で、ツイッターでの騎乗停止がようやく明けて、JRA移籍後初の重賞勝利となったルメールが笑っている。
これは本当にショックが大きかった。頭にきた。前にもこんな絶望を味わったことがあったっけな。今回はもう実績を残しているぶんだけ、余計に腹立たしい。よりによって牝馬に・・・
えっ?キズナまた1番人気?あぁ、他にいないのか。ゴールドシップは信用しきれないし、ねぇ。
腹を括って最後方から直線に賭けたけど、全然ダメ。
この屈辱的な春の3連敗を受けて、凱旋門賞への挑戦は取り止め、秋は国内専念となった。
・・・・
そして、エピファネイアは6月に、キズナは昨日、怪我で引退となりました。
今年は秋の天皇賞を見に行こうと思ってたのにな。本当に残念だ。
キズナ 14戦7勝 キズナ|競走馬データ- netkeiba.com
エピファネイア 14戦6勝 エピファネイア|競走馬データ- netkeiba.com
どっちも超良血だな。
俺はキズナ派だったけど、エピファネイアも本当にファンの多い馬だった。
もしかしたらこれ読んで怒ってる人の方が多いかもしれない。はっはっは、怒れ怒れ。
しかしねぇ、2頭の勢いが衰えるのと入れ替わるように、2年前のクラシックでずーっと後ろを走ってたラブリーデイが宝塚記念を勝っちゃうんだからねぇ、競馬はわからんよ。
ところでトウカイテイオーの血統が途切れようとしている今、競馬ゲームのウイニングポストシリーズでは「ディープインパクト→キズナ→サードステージ」という繋がり方にそのうち変わるかもしれないね。批判めちゃくちゃ出そうだけど。
追記:2019年に種牡馬デビューしたキズナ、産駒の新馬勝ち1号がルーチェデラヴィタって馬なんだけど、なんとこの馬の母父がトウカイテイオーなんだよ。すごいね。血統表に日本ダービー馬がいっぱいいるよ。
佐藤哲三
忘れてならないのは、キズナのデビューから2戦は佐藤哲三が乗っていたということ。
残念ながら落馬で大怪我を負ってしまって、それ以降は乗ることができなかった。
「キズナを可愛いと思う気持ちが自然と出た。もう、無理だと思った。」
引退会見で語ったこの言葉、寂しかったなぁ。
さみしいね
しかし・・・競馬のひとつの時代というのは、本当に突然終わりが来るものですねぇ。
しみじみしちゃうよ。
あぁ、あともう一回、もう一回だけ、キズナが勝つところを見たかったよ。見たかった。
それでも来年再来年スターは現れるのです
— ぶら (@brianbrian8497) 2015年9月20日