フランスで今日行われる凱旋門賞に、今年の日本ダービー馬マカヒキが出走する。
もう日本馬が有力馬として出走するのもそう珍しくなくなったよねぇ。本当にいつ勝ってもおかしくないと思える。
逆に今回負けてもあまりがっかりしないかもしれないな。もちろん、もう負けることに慣れたって意味ではなくて、今回だめでも来年・再来年またチャンスあるだろうという、ぼんやりした油断がそこにある。
正直今回はどれくらい期待できるのかもよくわからない。俺はマカヒキにそこまで思い入れもないので、どんなテンションで見るのかあまり予測がつかない。
そこにドゥラメンテがいれば、また違ったのかもしれないけれど。
デビュー
ゴールドシップ、ジャスタウェイ、ハープスターの3頭が凱旋門賞を走った2014年秋、その翌週にドゥラメンテはデビューした。
俺は新馬戦にあまり金を賭ける気にならないので、だいたいいつもそれが終わる昼過ぎに競馬場に行くことが多いのね。
ただしその日は好きだったウイングレットの子が新馬で走るってんで、まあ応援というほどではなくても、折角だし見ておこうかとそこに間に合うように行った。
なんとなく新聞を眺めてたら、◎がずらーっと並んでガチガチに人気しそうな馬がいる。なんだ、またサンデーレーシングの意味わからん馬名のやつが人気してんのか。はいはい。
こういうのが飛んでくれるとおいし・・・えっ?アドマイヤグルーヴの子?あれ?まだ子供いたっけ。いるんだ。知らなかった!なんで知らなかったんだろう意味わからん。なぜかのこの一つ年上の産駒で最後だと思い込んでた。
うーん、アドマイヤグルーヴめっちゃ好きだったけど、このオッズで買う気にはならないなぁ。取りあえずウイングチップの単勝買ったし別にいいや。
レースでは2頭共ずっと同じような位置取りで走って、ウイングレットの子は6着、アドマイヤグルーヴの子は2着。なんだよ両方負けるのかよ。
そのドゥラメンテは次の未勝利戦で圧勝して、その次のセントポーリア賞もドッカーンと快勝。ほんとにドッカーンって勝ちっぷりだった。
あれ、なにこれ。もしかしてクラシックでもいいとこあったりするんじゃない?完全に贔屓目込みだけどさ。
なんて思ってたら中1週で共同通信杯に出てきた。いやースプリングSでも良さそうなもんだけどねぇ。
このレースには一口馬主やってるお友達の馬も出ることになっていて、地方に住んでるけど当然府中に見に来るらしい。折角だしねっつって仲間で集まって現地で見てた。
ドゥラメンテは掛かりまくった上に道中で位置取りを下げたのも響いたのか2着。直前に京都記念でキズナが負けてたのも相まってだいぶテンション下がった。
中1週でここ使ったんだからもう一度トライアルから皐月→ダービーってのはなかなか厳しいよなー。かといって直行するには賞金的なところで厳しい。ディ・モールト厳しい。
こうなると次はダービーのトライアルあたりかな。
クラシック
なんか皐月賞出られるらしい。
フルゲート割れして出走枠が空いたんだってさ。ははは、ラッキー。
当日は神奈川の友人と見に行く約束をしていたので、現地の中山じゃなく東京競馬場に行ってターフビジョンで見ていた。
予想をする段になって、ドゥラメンテが完全に「惑星」であることに気付いた。能力的には勝ってもおかしくないとも思えるし、かといってサトノクラウンに全く歯が立たなくてもおかしくはない。
っていうかこれまでの4走全部で東京1800mのレースしか走ってないのはどういう意図なんだ?全然意味がわからん。デムーロへの乗り替わりはかなり大きいけど、当然そのぶん人気してる。これは買えませんね。
ひと通り馬券を買い終えて春の午後の陽気の中でのんびりと喋っていたら、締め切り間際になって突然「やっぱりこの馬を買いたい」と衝動が沸いて、馬券的妙味の薄い単勝を買いに走った。
クラリティスカイが逃げて、キタサンブラックがその後ろ、リアルスティールも好位から。サトノクラウンは後方、ドゥラメンテはその内。4コーナー回るところで、あーこれサトノクラウン届かないやつだな、前で決まるわ、と思ってずっと前を見てた。
これはリアルスティールで決まりだ、2着キタサンかな。福永騎手は、上手だな、でもそんなの関係ねぇ、っつって一気にドゥラメンテが差し切った。春先に吹き荒れる、突風のような末脚だった。
なにこれ。クイズ番組の最終問題で100万点とって大逆転するやつかよ。最終問題まで圧倒的にリードしてたリアルスティールと福永が気の毒にすら思えたもんね。
なんか母ちゃんの同期だったマイネヌーヴェルのフラワーCを思い出すな。
母親のアドマイヤグルーヴが大好きだったせいで、どうも俺はこの馬を「親戚の子」に近い目線で見ているところがあるのね。この頃は特に。
4コーナーで思いっきり膨らんでみなさんに迷惑かけて、せっかく勝ったのに自分でケチがつくような競馬して、まったくもう。
でもねぇ、皐月賞なんか勝っちゃってねぇ、親戚のおじさんとしてはもうこの時点で出来過ぎなんですよ。とにかく怪我しないで無事にいってほしい。もうそれだけ。
そしたらもうダービーが強いのなんのって。
強い馬が自らダービーを勝ちにいく競馬をして勝った。あららあの子ダービー馬になっちゃったわよ。お母さんは三冠レースであんなに苦労したのにねぇ。不思議ねぇ。
あたしはサトノクラウンから買ってたけどね。あんたはいつも馬券的においしくないのよ。
競馬ファンは「凱旋門賞と国内三冠どっちを狙うのか」なんて盛り上がっていて、「まあ凱旋門賞行ってほしいよね」派のほうが周りには多かったと思う。
俺はもう親戚の子が大スターになっちゃった気分なもんだから「新馬で負けてたあの子が、みんなのヒーローになって・・・」なんて不思議な感慨を勝手に抱きつつ、まあ凱旋門賞になるのかなーとぼんやりしていた。
そうしたら両前脚の骨折が判明して、結局どっちも出られないことになった。
あらら、まあしゃーない。この時なぜかあんまり残念に思わなかったんだよなぁ。なんでだろ。まあ来年もあるし。
古馬
ドゥラメンテをパドックで間近に見ながら、こいつもダービー馬になったんだなぁ・・・と改めて感慨深く思った。そんなに強そうに見えないのにねぇ。
しかし俺なんかがダービー馬にこんなに近付けるなんてセキュリティ甘いよな、とも思った。パドックって不思議な空間だわほんと。
4コーナーでこれはドゥラメンテ勝つわーと思いながら、俺は下がっていくロゴタイプばっかり見てた。後からレースを見返したらやっぱりドゥラメンテは強かった。やっぱつえーなお前このやろう。頼むよ今年も。
この馬を生で見るのは3度目、勝つ姿を初めて見られた。他の馬見てたけど。
さてドバイ。
秋の凱旋門賞を控えて、世界との対決。
どんなもんかねぇ、と深く考えずに見ていたらポストポンドに負けた。落鉄したまま走った影響もかなりあるんだろうけれど、ちょっと力の差もみえたような気がした。
宝塚記念。
ファン投票でなんと6位(結果)。
レースで1番人気になったことがないキタサンブラックが1位、2位がラブリーデイ。ドゥラメンテがミッキークイーンより票が入らないなんて・・・そもそも出走しない予定っていう報道でもあったのかな。
と思ったらそうではなくて、どうも投票フォームに問題があって、ドゥラメンテが検索しづらい仕組みになってたらしい。
4コーナー回るまでの位置取りが良くなかったのもあって、直線で伸びてファン投票1位と2位は差し切ったのになんと7位のマリアライトに負けて2着。
いやあそこから2着に来るって十分に強さを見せてると思うんだけどね。でも結果が求められる馬だし、皐月賞やダービーのうひょーっていう強さを見ているからどうしても物足りなさを感じてしまう。
ゴール板を通過した後にガクッとバランスを崩して、デムーロが下馬した。
そこから振り返らずに歩いて戻ってゆくデムーロの表情から、何が起こったか、ある程度の察しはついた。
また、今年の秋も・・・
後日、怪我による競走能力喪失というニュースが流れて、引退、種牡馬入りとなりました。
写真はYusuke Tsutayaさん。
ドゥラメンテ 9戦5勝 ドゥラメンテ | 競走馬データ - netkeiba.com
結局この馬が凱旋門賞で走ることはなかった。
これだけの馬が出られないまま現役を終えるとはねぇ。今になって残念さが込み上げてくるよ。
来年がある、なんて油断してるから。出来過ぎ、なんて思わずにもっと欲張って、怪我した時にきちんと残念がればよかった。
競走馬の話はいつも急に終わるんだよ。そんなこと前から知ってたはずなのにね。
だから今日は、俺はマカヒキを応援するよ。