母父トニービン

明るいところで読んでね

今日の夕暮れはとても心地よかった。

少しずつ暮れてゆく空と、まだ青いままの空、その間を歩いていた。

街全体が落ち着いて一日を終えようとする、深い呼吸のようなものを感じる。みんな今日もお疲れ様、と自分が暮らす街に声を掛けたくなるほどだ。

バスのヘッドライトさえ柔らかい。角を曲がると、学年ジャージの中学生がくたくたになって歩いている。その頭上で淡い光を放っている、名も知らぬ白い花。

通りに連なる家々は影になり、その先には薄い夕焼けが見える。これで豆腐屋がラッパを鳴らしていれば最高だったのだが。

うわぁ〜〜気持ちいいなぁ〜〜あっトイレットペーパー買って帰らないと・・・と思い出してセイムスに入ると、店内があまりにも明るくて面食らう。LED照明の白色はなんて軽率に光るんだ。

 

完全に日が落ちると、さっきまで見ていたのはどんな空だったか全く思い出せなくなっている。いつものことだ。

自分が中学生の頃、部活の帰り道に見た空だってもう覚えていない。

しかし忘れたわけではない。忘れなければまた戻ってくることもある。