母父トニービン

明るいところで読んでね

ヒシミラクルの話します

ヒシミラクルウマ娘だってよ。すげえ時代になったもんだ。

 

あの菊花賞はびっくりしたねぇ。スタートで武豊ノーリーズンが落馬してうわあああああああああああてなって、最後の直線またうわあああああああああああああってなって、配当が出てまたうわあああああああああああああああってなった。いや喉ぶっこわれるわ。

 

最後のあの実況がまたいいんだよ。

ヒシミラクル先頭!外から来たのはなんと、ファストタテヤマだーーーーー!!今年も大波乱になるぞっ!!」

スマホの着信音にしたい。

 

競馬で大荒れになった時にだけ感じる、あの独特な感覚。膝から崩れ落ちるような、妙に頭がスッキリするような、口から魂が抜けてゆくような感覚、今でも甦ってくるよ。

うわーまじかー。ファストタテヤマかー。うわーなんだこれー、って。

 

あの日は夕方からバイトに行った。休憩時間にふと夜空を見上げたら、月がでっかくてまん丸なの。大荒れを見た感覚とあいまって、なんか妙な恐怖を感じたことをハッキリと覚えてる。大荒れもあそこまでいくと怖いんだよ。

ちなみにこれまで私が最も恐怖を感じた大荒れは、ヤマトマリオンーラッキーブレイクで決まった2008年の東海Sです。意味がわかりません。

 

いや、なんとなく思ってはいたんだよ。神戸新聞杯を前に俺の好きなダービー馬タニノギムレットは怪我をして、それを勝ったシンボリクリスエス菊花賞に出ないっつって、そこで2着だったノーリーズン菊花賞で一番人気。

えー?ノーリーズン?ちょっと買いたくないなぁ。とは言え、他になにがいるかというと……うーん。ってな感じで。だからってさぁ、ヒシミラクルメガスターダムが直線で競り合って、そこにファストタテヤマが突っ込んでくるなんて思わねえんだよ。

 

 

ヒシミラクルは続く有馬記念で惨敗。翌年の阪神大賞典も惨敗。さらに大阪杯も惨敗して、天皇賞(春)を勝ちます。意味がわかりません。

まあこのレースもさぁ、前年にマンハッタンカフェが引退して、ナリタトップロードも引退して、ジャングルポケットも引退して、1番人気がダイタクバートラムでメンバーのレベルがちょっとどうかなって感じだったんだよね。

調べたら3番人気がトーホウシデンでびっくりした。あー、怪我明けから1年かけて復調してきたとこだったのか。それにしてもなぁ……。

友達は2着のサンライズジェガーから買って当てたらしい。うるせえんだよ。

 

 

天皇賞はメンバーいまいちに思えたけど、その分というか、この年の宝塚記念はやたらとメンバーが揃った。

まず現役最強になったシンボリクリスエスが出てくるし、ダービーを勝ったばっかりの3歳ネオユニヴァースも出てくる。有馬記念の大穴2着から本格化した強力な先行馬タップダンスシチーも、なんでもアリのアグネスデジタルもいる。

 

正直ここまでの春の古馬戦線は前座、真打登場です。G1を2勝したとはいえ、当然のようにヒシミラクルは脇役……と思いきや、土曜日に大変なことが起こる。

なぜか前日オッズでヒシミラクルがダントツの1番人気になりました。意味がわかりません。

なんか前売りでヒシミラクル単勝に突っ込んだ人がいたんだって。前日に大金ぶち込むって、レース始まるまで、どうやって、何を思って過ごしたんだよ……。もし俺だったら、とかそういう想像が全く及ばない。

後から知ったことだけど、その「ミラクルおじさん」はダービーのネオユニヴァースで当てて、その配当をそっくり安田記念アグネスデジタルに突っ込んでまた当てて、さらにその2頭が揃って出てきたこの宝塚記念で、それを全部ヒシミラクル単勝にぶち込んだんだって。ほげー。

 

そんな大金がぶち込まれても、ヒシミラクル単勝は最終的に6番人気だった。

レースはスタートでネオユニヴァースが思いっきり出遅れた。ズコーッ!おい!マジかよデムーロ!その年のダービー馬が出てくるなんて俺はめっちゃワクワクしてたから、テレビの前でひっくり返ったわ。

ほんで4コーナーでタップダンスシチーが早め先頭、内からシンボリクリスエスも伸びてきて、うおおおおお真っ向勝負のマッチレースだ!!と思ったらどっちも残り200mで脚が鈍り始めて、2頭の外からまさかまさかのヒシミラクルですよ。最後に突っ込んできたツルマルボーイも凌ぎ切って勝っちゃった。

 

なんなのこいつ!?嘘でしょ!?驚かされるのはもう3度目なのに、今回が一番びっくりした。いやヒシミラクルが強い馬だって知らなかったからさ。

あー言ってたわそういえば。天皇賞を勝ったインタビューで角田が、「次は中距離でも頑張ります!」って。いや大阪杯だって全然だったじゃねえかよwと思ったけど、天皇賞でなんか手応えみたいなものを掴んでたのかな。

 

前日に大金ぶち込んだ「ミラクルおじさん」は、2億円近くの配当を手にしたらしい。いやレースの1着賞金より高いやないか。

最後に大外からツルマルボーイが突っ込んできた時は世界中の誰よりもストレスを感じたろうなぁ。

 

 

地味だけど、続く京都大賞典も良いレースだった。

楽々ハナを切る1番人気のタップダンスシチーを見て、ヒシミラクルは1コーナーからスイーっと2番手に位置取りを上げる。前にずっとプレッシャーをかけ続けて、いつものように早いうちから角田がグイグイ手を動かしてヒシミラクルが追っかけるけど、そのままタップダンスシチーが逃げ切った。

マッチレースの追っかけっこって面白いよね。京都競馬場を一周する間、ずーっと2頭がほぼ1馬身差のままなの。

 

この後ヒシミラクルは怪我で1年休む。その間にタップダンスシチージャパンCをぶっちぎりで逃げ切って、翌年の宝塚記念も快勝して、凱旋門賞に行った。

 

 

ヒシミラクルは翌年の天皇賞(秋)で復帰して後方から惨敗。続くジャパンCも、一部で語り継がれるレースになった。

おいおい、ヒシミラクル今日は前目につけてるぞ!3番手!3コーナーを回って……おいおいなんだこの手応えは!?いつもならもうグイグイ押してるのに!やばい!またこいつに持ってかれる!

……と思ったら追い出してからぜんぜん伸びなくて、ゼンノロブロイにあっさり交わされてそのまま馬群に沈んだ。

 

当時、2ちゃんねるの競馬板には、

ヒシミラクルの手応えにびびった奴の数→(   )」

みたいなスレッドがいくつも立った。

 

続く有馬記念も惨敗して、京都記念3着から臨んだ天皇賞(春)は16着。再度の故障発生で、引退となった。

この天皇賞も、スズカマンボビッグゴールドでとんでもない大荒れだったんだよなぁ。福永が妙にゆったり構えていた1番人気のリンカーンは6着だった。

 

でも、このレースよりも、あの菊花賞のほうが大荒れだった。そりゃそうか。ヒシミラクルファストタテヤマだもんなぁ。

 

 

ヒシミラクル 28戦6勝 ヒシミラクル | 競走馬データ - netkeiba.com

 

最後にもっかい言うわ、「ヒシミラクルファストタテヤマ」。

競馬はわからん。あの菊花賞で、「競馬はわからない」ということがわかったよ。穴馬が先頭に立ってびっくりしてたら、もっと大穴の馬が突っ込んで来るんだもん。

 

 

ウマ娘ネオユニヴァースも出てきたってことは、もしかしたらローエングリンウマ娘に登場する日も遠くないのだろうか。

長らくプレイしていないけど、ローエングリンが出るならちょっと課金してもいいかもなー。してもいいけど、これから俺が何をどう頑張っても、もう後藤から金が返ってくることはねえんだよなぁ。

 

後藤が死んで、もう何年経ったろうか。

おい木刀、もとい後藤、20年前の天皇賞(秋)で先輩に一歩も引かなかった吉田豊は、サウジアラビアの大レースで逃げ切ったぞ。せっかく去年はキタサンブラックの仔で差し切って阻止したのにな。

後藤の負け分は、ヤツに肩代わりしてもらうか。

 

わたしの書いた競馬読み物 - 母父トニービン