午前中に整体へ行った帰り道、弁当屋でカキフライ弁当を買う。向かいの公園のベンチに座る。葉がわずかに残る木々は、正午が近いのに影が長い。風が穏やかな小春日和。隣のベンチでは誰かがスマホに向かって日本語の発音練習をしている。
弁当の蓋を開け、水っぽいソースをかける。ここの弁当屋は揚げ物がうまい。色褪せた芝生に絡まる落ち葉が陽の光を反射している。すべり台のすべるとこめっちゃ冷たそう。というか周りに暖かそうなものが何もない。自動車免許センターを思い出す。俺は免許取ったのも冬なら生まれも冬だから、あそこはいつもこんな寒々しい景色だった。
なんか日向に座ってたのにいつの間にか日陰になってるし。冷えた脚に葉が落ちてくる。くるくるミラクル。わたしはウルトラリラックス。
凛として時雨というバンドの音楽とは、長年不思議な付き合い方をしている。たまたま行ったツーマンライブで見てから20年弱、アルバムを5〜6枚聴いてきたが判別できる曲は10曲もない。俺の耳どうなってんだよ。いちおうちゃんと聴いてるんだぞ。一番好きな曲もサビの繰り返ししか歌詞わかんねえし。基本何言ってるかわかんなくて何を演奏してるかもよくわかんないんだよあの人達。
でも時々あの混沌にちょっとお邪魔したくなる。不思議なもんだ。それでいて聴いてるとワンパターンな気もしてきたりしてわけがわからん。
新宿末廣亭で神田伯山みてきた。中村仲蔵やってた。いやー、中村仲蔵まじ中村仲蔵。満員の客が聴き入って静まり返ってたよ。生唾を飲み込むシーンでその音が直接聞こえた。いい席で見られたのである。建物の周りの飲み屋の呼び込みの声もうっすら聞こえてきた。
歌舞伎を見るようになったからちゃんと花道から出てくる人の映像が浮かぶようになって、話の理解度みたいなのがちょっと上がってる気がする。すごいね伝統芸能。
演目が終わって、最後に幕が降りる時に「日本一!」って声がかかってた。あれほんと興奮する。ああ、まったくその通りだ、今、日本一のものを観たんだ、観客全員がそう思ったに違いない。演芸場から出てすぐ「あーよかった、絶対また行こう」と思えることほど幸せなことはないね。ほんとうにいい趣味だ。競馬の帰りにそんなの思ったこと一度もないもん。勝った時なんかはもう早足で逃げるように地下通路を移動してる。