産駒も頑張っている、二冠馬ネオユニヴァースさんです。
いやぁ現役当時は特に好きってわけでもなかったんだけどね。3歳の春はサクラプレジデントのほうを応援してたし、ダービー以降はリンカーン寄りで応援してた。
そうねー、ネオユニヴァースの印象というと、いわゆるサンデーサイレンス産駒的な「華奢な体でスマートな切れ味」だとか「荒ぶる気性を闘争心に変えての爆発力」だとかそういう個性ある強さではなくて、割と正攻法寄りの競馬で真っ向から相手をねじ伏せる強さのある競走馬だったよね。
サクラプレジデント
この世代で最初に有力馬として期待されたのはサクラプレジデントだったんじゃないかなぁ。札幌2歳ステークスを勝って、賞金面での余裕ができたので12月の朝日杯FSまではしばしお休み。
その間に東スポ杯を勝ったブルーイレヴンは暮れのラジオたんぱ杯に向かったので朝日杯はサクラプレジデントが1番人気になった。まあ普通にこの馬かなーと思ってたらいきなり出遅れて、それでも直線で内からけっこうな勢いで伸びてくるんだよ。
うおーこれは差し切るわすっげーと思ったらゴール直前でぴたっと止まるの。あの時は本当にテレビから「ぴたっ」て音が聞こえた。セキテイリュウオーかよ。
・・・まあまあ、中山マイルって感じの馬でもないのにここまで盛り返したんだから、来年のクラシックではいいとこあるでしょうね。春に期待しよう。
こいつは素質は一級品と言われてたんだけれども気性が悪くてねぇ。なんたってグーグルで「ブルーイレヴン」って入力すると最初に出てくるサジェストが「ブルーイレヴン 気性」で次が「ブルーイレヴン 暴走」だからね。
でもそういう荒削りな雰囲気もまた魅力だったりするし、猫も杓子もサンデーサイレンス産駒という時代にあって「父サッカーボーイ × 母父シンボリルドルフ」って血統がなんかいいんだよ。それにこの年は日韓W杯の年だった。サッカーボーイの子でこの名前ってことはやっぱり期待されていたんでしょうねー。そりゃそうよねー。
しかしそのブルーイレヴンが全然伸びないんだわこれが。困るなぁ。この時は雨で馬場がめちゃめちゃ悪くなってたのよね。そんでここを圧勝したのがザッツザプレンティですよ。これは強かった。
俺はほとんど記憶にないけどこの時の鞍上は翌年2月に引退する河内洋で、結果的にこれが現役最後の中央重賞制覇になったらしい。
もう来年はザッツザプレンティで決まりか?
いやいやサクラプレジデントは出遅れからあそこまで盛り返したんだからまともに走れば負けないよ。
いやーブルーイレヴンは今回馬場が合わなかっただけだって。
いやいやいやいや武豊はトゥザヴィクトリーの弟サイレントディールを選ぶんじゃないの。
えーとエイシンチャンプは正直よくわからん。半分マル外のエイシンだしなぁ。
主役候補の多い年
明けて2003年、京成杯はすごかった。
ブルーイレヴンがガツンと引っ掛かって1コーナーからエンジン全開ですよ。さすがの武豊も抑えきれなくて大暴走しちゃって、当然直線でぱったり止まって惨敗。上がり3ハロン42秒だってよ。レース後に武豊が「僕にはこの馬はちょっと無理です・・・」と角居調教師に言って、自ら降りたとかなんとか。
2月のきさらぎ賞でやっと今回の主役、ネオユニヴァースが出てくる。武豊でシンザン記念を勝ってきたサイレントディールを負かして、おっなんかそこそこ強そうなの出てきたぞ、っていう感じだったかなぁ。
3月の弥生賞は満を持してザッツザプレンティの登場です。さらっと武豊に乗り替わってる。朝日杯のエイシンチャンプもいたけど、人気にはだいぶ差があったね。ザッツは後方からじっくり構えたけど武豊が考えていたほど末脚が切れなかったのか、案外の6着。エイシンチャンプが勝った。
こうして有力どころがクラシック前哨戦でバタバタと負けていく中、その2週後のスプリングSではいよいよサクラの大統領が登場。主役は遅れてやってくる。いよっ!待ってましたっ!
重賞連勝で世代トップを狙うネオユニヴァースとの対決が注目されて、単勝は完全に2強のオッズになった。どうせ次のG1で福永はエイシンチャンプに乗ることになってるから、次を見据えてネオの鞍上は若手イタリア人騎手のミルコ・デムーロに交代。
サクラはスタート直後から掛かった。代打騎乗の武幸四郎が、長身の背中をずっと丸めて必死に抑えようとしてたのが印象的だったなぁ。
最後の直線はサクラとネオの一騎打ちになって、これをネオが制す。うぐぐ。サクラは最後わずかに根負けしたって感じだったけど、ここを叩いて調子を上げれば充分巻き返せそうだという印象を俺は持った。
あっちは前走からの勢いがあって、こっちは休み明け。おっけーおっけー問題ない。
Yes,we can。
さぁどうなるクラシック
皐月賞。
サクラプレジデント主戦騎手の田中勝春はこの時点で、G1レースに限ると10年以上に渡って100に迫るほどの連敗中だった。確かに大相撲の寺尾みたいに、たくさん負けるってことはそれだけ一線で闘い続ける実力があったってことなのよという見方もあるけど、勝春の場合はもう完全にネタにされ始めてていて、田中負春なんて言われてた。俺も言ってた。
レースはまた直線でサクラとネオの一騎打ちとなって、前回よりも差は縮まったけど勝ったのはまたネオだよ。悔しいなぁ。デムーロは日本のG1初勝利。少し離れた3着はエイシンチャンプ。渋い・・・。
ゴール後にデムーロが勝春の頭をバチコーンと叩くシーンは有名だよね。あれ、デムーロが嬉しくてハイタッチしようと手を上げたら隣で勝春がヘコんで下向いてて、咄嗟にその手で頭を叩いちゃったんだってね。ノリ悪りーなおい!って感じで。デムーロのテンションと勝春のテンションの対比が面白くて余計笑っちゃう。
結局サクラはねぇ、気性が前向きすぎてどうしても引っ掛かっちゃうんですよ。これ以上距離が伸びたらもうあかん。ダービーはちょっとどうかなぁ。
この日は重馬場だった。ってことは重馬場で重賞を勝ってるネオとザッツで決まりや!ザッツも実力は足りとるはず!サクラは距離もたん!いらん!1点勝負でいただきや!と2頭の馬連を買った。
ネオユニヴァースは道中で武豊のサイレントディールに内に閉じ込められたことで腹を括ったのか、4コーナーでみんな重馬場で荒れた内側を嫌って外めを回ってるのに敢えてコース内側を突いた。そしてそのまま勝ち切った。
ウイニングランでヘルメットを取って、スタンドに向かってペコペコ頭を下げる坊主頭の若いイタリア人。あれはすごく印象に残ったなぁ。
ザッツザプレンティも外から伸びたんだけど、ゼンノロブロイを差せそうで差せなかったんだよね。いやーいいとこ狙ったと今でも思うんだけどなー、1着-3着か・・・ってワイドでも10倍ついたのかよ。
それとこの時のゼンノロブロイにすげーむかついたので、これ以降ゼンノロブロイは意地でも買わなかった。そのせいで翌年は本当にひどい目にあった。
サクラはやっぱり引っ掛かってしまって、7着に着順を落とした。そういう予想は当たるのかよ。
攻めの二冠馬
そんで何が凄いかって、ダービー走ったら普通はここから秋までゆっくり休むのに、宝塚記念に出るんですよ。
二冠勝った3歳馬が宝塚記念出るなんて聞いたことないぞ。無理して秋に支障出たらどうすんの?が半分、うおーおもしれー楽しみだな!が半分。
前年にローエングリンが3歳で出走して3着に好走したんだけど、それも出走に前向きになる要因だったのかもな。
宝塚記念。
さあ二冠馬どんなもんか、やれんのか、やれんのかおい、と思ったら出遅れ。俺もずっこけた。
そしてまさかまさかのヒシミラクルですよ。すごい!こんなことあんのかよ!ビックリ仰天なんてレベルじゃないよ。戦慄を覚えた。ああいう感情って競馬くらいしか味わえないんじゃないかね。
札幌記念。
サクラの大統領がここに出馬してきた。ジャングルポケットやアドマイヤドンとか、3歳馬が出走するのがちょっとしたトレンドになってたんだよね。
おいなんかさらっと武豊が乗ってるぞ。さすがだわ。強敵エアエミネムがいたけどきっちり差し切って、約1年振りの勝利になった。さすがだわ。
実はデムーロは短期免許制度の関係で、もう年内いっぱい日本では乗れないんだよね。
ネオユニヴァースにはとりあえず福永が乗って、ゼンノロブロイの3着に敗れた。武豊のサクラは2着、負けはしたもののようやくネオには先着した。
三冠どうでしょう
菊花賞。
クラシック三冠制覇がかかってるのに、春の二冠を共に勝ってきた騎手が乗れないってのはちょっとねぇ・・・ってんで、JRAの計らいでルールが一部改正されて、 デムーロが乗れるようになった!ファンからすると、これはかなりJRAのポイント上がったよね。
しかし勝ったのはザッツザプレンティ。安藤勝己が向こう正面から一気に仕掛ける大勝負で勝ちきった。俺は2着のリンカーンから馬券買って、ザッツには流していなかった。あー!馬券へたくそすぎる!
ネオは3着でも今日は完敗という感じで、ゼンノロブロイはコーナーで詰まって残念な4着。大統領はかかり通しで惨敗。というかそもそも菊花賞に出るとはなぁ、というのは今の感覚だろうか。
これまたなかなかの重馬場で、タップダンスシチーが大差で逃げ切った。なんか変なレースだったな、すごいけど何これ、みたいな。
ザッツが2着、ネオは4着、サクラの大統領は菊花賞に続く惨敗で支持率がだいぶ低下してしまった。Change,we need。
この後はネオ、サクラ共に有馬記念を回避して翌年春までお休み。
んなアホな
中山記念。
サクラプレジデントが出馬。ローエングリンやサイドワインダーを軽く蹴散らして、いよっ!大統領! ってな強い勝ち方だったね。
ようやく本気出し始めた、また強い大統領を見られるぞ~ワクワクと思った矢先に体調を崩してしまって、長期休養に入る。うぐぐ。
大阪杯。
ネオユニヴァースが完勝した。マグナーテンほんとに稼ぐなぁ、くらいしか他に記憶がない。
天皇賞。
レース前はネオユニヴァース、ザッツザプレンティ、リンカーン、ゼンノロブロイの4歳4強と言われて、どれが勝つんだ?と話題になったが、イングランディーレおじさんがまさかの逃げ切り。んなアホな。
んなアホな。
武豊とリンカーンの馬券握って東京競馬場のターフビジョンで見てたんだけど、観衆のどよめきが凄かった。
あれ?・・・おい・・・おいおい・・・これって・・・おいおいおいおい!おおおおおおおおおおおおおおってなった。表現へたくそかよ。
いやーまさか4強全部負けるなんて思わなかったよ。すごい。競馬すごい。
そして、ネオユニヴァースは次の宝塚記念に向けて調整している時に怪我して引退します。
というわけで急に話が終わります。んなアホな。残念ながら、競馬とはそういうものなのです。
ちなみにザッツザプレンティもこの頃に怪我して休養入り。翌年復帰したけど負け続けて引退。
休んでたサクラプレジデントは秋に復帰したけどこれも怪我して引退。
ゼンノロブロイはこの年の秋にG1を3連勝して2004年度代表馬になった。こいつ翌年の引退当時は通算獲得賞金2位じゃなかったっけ。とにかくすっげー稼いだ。
リンカーンは頑張って翌々年まで現役を続けたんだけど、ディープインパクトの登場などもあってG1で好走を繰り返したものの勝てなかった。
えー!この馬のヒーロー列伝ないのかよ!
引退式ではラルクのNEO UNIVERSEが流れてました。粋なことするね。
生まれ変わる季節よ
切なすぎた季節よ
空のように一つに
結ばれようneo universe
NEO UNIVERSE-L'Arc-en-Ciel
いいですねー。
なんだかんだ言ってこの世代はみんなで一緒にクラシックを走ってた頃が見てて一番楽しかったなあ。特にダービーはみんな一緒に勝利を目指して走ってた、という気がしてとても印象深い。
ネオユニヴァース 13戦7勝 ネオユニヴァース|競走馬データ- netkeiba.com
サクラプレジデント 12戦4勝 サクラプレジデント|競走馬データ- netkeiba.com
ちなみにこの世代で一番好きだった牡馬はユートピアです。そうきたか。
牝馬はこいつ。
デムーロの話もします
ネオユニヴァースで初めてG1を勝った、イタリア人騎手のミルコ・デムーロ。
彼は日本競馬が好きすぎて毎年のように短期免許を取得して日本に乗りに来て、本当によく勝っていた。あっ今デムーロ来てんだ、じゃあデムーロ買っとこう、くらいのノリですよ。
天覧競馬として行われた2012年秋の天皇賞でデムーロの乗るエイシンフラッシュが勝った時、俺は東京競馬場で見てた。ウイニングランの嬉しそうな表情や仕草や天皇陛下に向かって跪いて最敬礼した姿なんかを見てても、本当に日本が好きなんだなぁってのがよーく伝わってきた。
そして遂に試験に合格して、今年2015年からはイタリア国籍のままで日本中央競馬会所属の騎手となりました。しかもネオユニヴァースの年と同じように、ドゥラメンテで皐月賞とダービーの二冠を勝った。
それで尚更インタビューに引っ張りだこになるんだけど、なにかにつけてネオユニヴァースを引き合いに出すんだよね。本当にネオユニヴァースのことが大好きなんだろうなぁ。
あの馬がデムーロと日本競馬を繋ぐのに大きな役割を果たしたんだろうと思うとなかなか感慨深い。
産駒も活躍
初年度の産駒からいきなりアンライバルドが皐月賞を、ロジユニヴァースが日本ダービーを勝つ。すごいね。でもこいつら1番人気になると飛ぶんだよ。困るよほんと。
そして翌年の産駒ヴィクトワールピサは1番人気で皐月賞を勝つ。暮れに有馬記念を勝ったあと、翌年に世界最高賞金でお馴染みのドバイワールドカップを勝っちゃう。
しかも鞍上はデムーロ!この時もネオユニヴァースの話ばっかりしてた。
粘りまくって2着に残ったトランセンドと2頭合わせて600万ドルくらい咥えて日本に帰ってきた。
でもその2011年は歴史上いちばん円高な時期なのでした。まじうける。