これ書いた後に、なんか前に「儚い。」で締めた文章書いたことがあったなーと思って持ってきた。
2013年5月、キズナがダービー勝つ直前に書いたやつ。
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ヴィクトリアマイルでレース中にフミノイマージンが故障して競争中止、予後不良となった。
競馬における予後不良(よご ふりょう)とは、主に競走馬が競走中や調教中などに何らかの原因で主に脚部等に故障を発生させた際など、回復が極めて困難で、薬物を用いた殺処分の処置が適当であると診断された状態を言う。
転じて、競走馬への安楽死処置そのものに対する婉曲的表現として用いられる場合も多い。
下肢部に骨折やヒビなどの故障が発生した馬は、その自重を他の健全肢で支えなければならないため、過大な負荷から健全肢にも負重性蹄葉炎(ていよう えん)や蹄叉腐爛(ていしゃふらん、ていさ ふらん)といった病気を発症する。
そのため、病状が悪化すると自力で立つことが不可能となり、最終的には衰弱死、もしくは、痛みによるショック死へと到る。
我々の世代だと、どうしても"ス"がふたつ続いてさらにその後に濁点付きが続くせいであやうく噛みかける、あの馬が思い起こされる。
少し上の世代だと、3冠・3連覇を阻止し、ナイスネイチャの有馬記念・4年連続3着をも阻んだ関東の刺客でしょう。
今回の件も、もう重賞いくつも勝ってるんだし今年の春で引退していれば…とかそういうのは結果論でしかない。
競走馬は結果論で語ってはいけない。
颯爽と夢を叶えて引退した馬もいれば、夢を追い続けてボロボロになった馬もいたし、夢を見続けて最後の最後で叶える馬もいた。
ウオッカだってもしヴィクトリアマイルとジャパンカップを勝った2009年に何かあったら、翌年のドバイ遠征で何かあったら、どう言われていたか。どれだけ叩かれていたか。
もうね、サラブレッドはレースに出る時点で、いや調教を行う時点から「何かあったら」という一定のリスクを常に背負っているんだよ。
5歳の暮れにJC勝って有馬記念回避の時点で、これで引退だろうと思っていた。翌年ドバイに行くって聞いたとき、そりゃもうめっちゃ嬉しかったね。まだ"それ以上の夢"を追い掛ける姿を見せてくれるのか!って。今思うと、同期のダイワスカーレットが壮大な夢を描いて間も無いうちに怪我で引退してしまっていたことも、俺の気持ちの中では少なからず影響していたのかもしれないね。
サウンドオブハートだって去年の桜花賞後に骨折して、半年後になんとか復帰して今年の阪神牝馬ステークスでやっと重賞を勝った。しかしこちらもヴィクトリアマイルで再び骨折して繁殖入りすることになった。
本当にこの話題に関しては、起こってしまったことに対してただ残念としか俺は言えない。
いろんな馬がいるよ。
ダービーをぶっちぎりの強さで勝ち、翌年も活躍を続けて4歳いっぱいで無事に種牡馬入り。産駒から数多くの重賞勝ち馬を出すディープインパクトやスペシャルウィーク。
大きな期待に応えて春のクラシックを勝つも早期に故障、既に種牡馬としての価値が充分に高かったため早々に現役を引退。 期待された通りに種牡馬として活躍馬を多く輩出しているアグネスタキオンやキングカメハメハ。
逆に長い間現役を続けて何度も何度も大きなレースに挑戦し、そしてようやくG1タイトルに手が届く。その姿をずっと見ていた多くのファンからこれ以上ないほど祝福された、タイキブリザードやカンパニー。愛さずにいられない、あの馬もそうだった。
ファンから期待の高かったローエングリンはどれだけ走っても、どれだけファンが応援してもG1にだけは手が届かなかった。しかし引退後に種牡馬入りすると、早くも2年目の産駒がクラシックを獲った。
かたやジャパンカップを含めG1を2勝しながら、種牡馬入りできるかどうかなかなか決まらないローズキングダム。関係者が種牡馬入りさせたいからこそ、より良い受け入れ先を見つけたいからこそ、今後について決定も発表もできないんだと俺は思っているけれども。
まさかブルーコンコルドが初ダートで圧勝するとは思わなかったし、その後の走りをみても交流G1まで勝てるとは思えなかったし、交流G1を連勝したところで2000mの東京大賞典を勝つとは思わなかった。それで種牡馬になれないなんて思ってもみなかった。
G1馬テレグノシスは種牡馬入りできて良かったなぁと思っていたら、1頭の産駒が重賞を3つも勝った。しかし他の仔らが奮わず結局種牡馬を引退することとなった。
予後不良寸前の大怪我から長い時間をかけて復帰し、年度代表馬にまでなったのはサクラローレル。翌年の海外遠征でまたも予後不良寸前の大怪我をするがなんとか帰国できた。種牡馬入りし、同じ"サクラ"の冠名の産駒が重賞を勝つ。しかし、しかし・・・そのサクラセンチュリーが好調のさなかに怪我をしてしまい、長く休んだ後の復帰戦のレース中に故障、あろうことかローレルの子のほうが予後不良となってしまった。
ちなみにローレルの現役当時はマヤノトップガン・マーベラスサンデーと3強と言われ春の天皇賞で1~3着を独占したが、その産駒が同じ春の天皇賞で対決した時には最先着した(ブリットレーン13着、チャクラ15着、シルクフェイマス18着)。
外国の例だとジョージワシントン、良血馬との評判通りにG1をいくつも勝ってめでたく種牡馬入りをする。しかしすぐにに生殖能力に問題があることが判明し、なんと現役に復帰させられる。再び競走馬として調教されて数度目のレース中に故障。その場で予後不良と診断されて安楽死処分となってしまった。
その馬名で人気を博した、テイエムプリキュア。2歳時にG1を勝ったがその後まる3年の間惨敗を繰り返し、もうここまでと決めた引退レースでなんと逃げ切り勝ちしてしまう。引退宣言を撤回し、同年のG1レースで2着に入ってあっと言わせた(馬連とった人はどっちが軸でどっちがヒモだったんだろう)。
いろいろいるよ。いろいろ。時間さえかければあと何頭でも書き足せる。
まぁ競馬ファンは外からいろいろと言うが、現役を続行をする / しない、種牡馬入りさせる / させないという判断にはビジネスが絡んでいるという側面も相当に大きい。
ビジネス的にベターな選択をしているケースが大半だろう。ファンに喜んでもらう為に種牡馬入りさせるなんて聞いたことがない。いや、どんな血統の馬でも配合次第で…なんてのはダビスタのやり過ぎ。それが許されるのはごくごく一部のオーナーブリーダーだけ。
馬を所有する側にとって競馬は「レースで賞金を稼ぐことへの期待、大いなる名誉を獲得することへの期待、凄かったあの走りをもう一度・・・という期待、繁殖馬としてレース走る馬を出すことや高く売れる仔を出すことへの期待」という多くの期待と様々なリスクを天秤にかける、見えない将来を買うビジネスだから特に難しい。
フサイチペガサスという馬がいた。
アメリカで生産され、競り市で約6億円という桁外れの金額で日本人の関口房朗が競り落とし、そのままアメリカで競走馬となる。日本人所有の競走馬として初めて米ケンタッキーダービーを勝った。
そのダービーを勝った1~2ヶ月後、まだ現役の競走馬として走っていた時点で、いずれ種牡馬入りした際の所有権売買の話し合いが行われていた。購入を打診した側が馬主の関口に「好きな金額を書いてね!」と白紙の小切手を渡し、当時"超大金持ち"の関口がドキドキしながら「は・・・80億」と書いたところ「うんわかった」とあっさり契約が成立したらしい。本人が昔ジャンクスポーツでニヤニヤ話してた。
翌年の種牡馬入り後は種付け料1,000万×200頭=約20億、たった4年で元をとりやがった、とも話していた。
※数字は正確じゃないだろうけど大体そんな感じ
ビジネス。
ディープインパクトは生涯の14戦で14億以上稼いだが、引退後に組まれたシンジケートは51億(つまり種牡馬として51億で売れた)。仮に凱旋門賞にこだわってもう1年現役を続けた場合の「出走したレース全部勝った場合に稼ぐ賞金」+「無事に種牡馬入りした場合のシンジケートの総額」の合計は全く予測できないが、負けて馬の価値が下がるリスクや"何かあって"全てを失うリスクを考えたらビジネス的にはまぁ4歳で引退だよね。
でも、でもねぇ、競馬ファンてのはあれこれ言っちゃうもんなんです。
あのタイミングでディープインパクトの引退発表はないわー、とか言っちゃうもんなんです。
レーヴディソールのほうがオルフェーヴルより強かったわー、とか言いたくなっちゃうんですよ(ここまでの流れと関係ない)。
ダービー出てもかるーく3馬身離して圧勝してたでしょ。いや、あの年は雨で馬場が悪かったから…1馬身くらいしか差は付かなかったかもしれないな(冷静)。あんな超スローの有馬記念なんかひとまくりで5馬身ちぎってる。とか言いたくなっちゃうんですよ(俺だけ)。
ロジユニヴァースも早く種牡馬にしてやれよー、とか言いたくなっちゃう。ならない?
2009年に日本ダービーを勝ってからもう、まる4年。まさか、本当に種牡馬になれないのか?ダービー馬は結構さかのぼってもみんな重賞馬を出してるんだけどな、アグネスフライト以外は。
そして、今週は日本ダービーが行われる。今年の勝ち馬は無事に現役を全うして、種牡馬になれますように・・・。
人の夢と書いて、儚い。